著述編

法難手記

上申書(井上福夫)

井上福夫私事、此度起訴致されました、二件に関し、甚しい虚偽の供述を致し、御手数を掛けましたのは、洵に申訳なく、茲に其事実を申上げ御諒解を御願致し度、上申する次第であります。逮捕理由には、「昭和二十三年十二月、岡田茂吉名儀の財産参百万円を隠匿...
法難手記

カマを掛ける

取調べの場合、カマを掛けるという言葉は昔からよく言はれるが、今度の取調べに際し此カマを掛けられた事実は非常に多く、殆んど取調べの骨子となってゐたと言ってもいい。近来の取調べ方針は誘導訊問を最も嫌ってゐるやうだが、然し誘導訊問よりカマ掛け訊問...
法難手記

刑務所行き

その翌日例の如く調べ室に呼ばれた。私は交霊術などと言っても、警察官などに判る筈はないから、色々考えた末斯う言った。「実は昨夜絶体絶命の結果一心に神に祈った、すると御利益があって記憶がハッキリ浮び出し、判ったからお答えをする」と言ってスラスラ...
法難手記

頭脳の拷問

茲で特筆すべき事が起った。それはM氏とK氏との両氏から調べられた時の事である。此時は主にM氏が訊問に当ったが、昭和二十三年十一月八日に始まった脱税問題に対する運動費の件が主であった。私は全然記憶にないから答える事が出来ないと言うと、M氏はど...
法難手記

記憶の捏造

之を聞かされる毎に私は気が気じゃない。どうしたらいいのだらう。全然ない記憶を呼び起せと言っても無理だし、呼び起さなければ幾日でも留置されるとしたら、何とかしなければならない。斯んな苦しみをする位なら以前に何か少し位悪い事をしておけばよかった...
法難手記

取調べの模様 最初の取調べ

警察に勾留された第一日目は、簡単な取調べで終ったが、第二日目であった。朝飯を済ますや直ちに二階の調室に連れられた。K刑事部長、M刑事部長の二人の外に、S警部といふ人が応援として、静岡市国警本部から此朝出張して来たと言はれた。茲で右の三人に就...
法難手記

強請団

此ユスリ団というのは、一、二年前から本教団を狙っており、目的は、巨額の金銭を獲得しようとして、彼の手、此手の策略を用ひて、教団を執拗に揺ぶるのである。噂によると国会議員数人を初め、宗教人、旧右翼系の利者、本教の反対者等々、少くとも十人内外の...
法難手記

発端 大手入れ

はしがき中にもある如く、昭和廿五年五月八日未明、突如として青天の霹靂の如く、本教関係の熱海所在の建物六ケ所、小田原一ケ所、合計七ケ所に対し、一大家宅捜索が行はれた。其際動員された警官、無慮八十名と言ふのであるから、如何に大仕掛であったかが判...
法難手記

はしがき

此記録は昭和廿五年五月八日発生し、同年七月十二日一段落着いた迄の、私の嘗めた体験記録であって、之によって目下起訴中の私の裁判を有利に導こうなどといふ考えは毫末もない。唯早い内に書かないと記憶を失ふ虞(オソ)れがあるから、筆を執った迄である。...
法難手記

法難手記

・はしがき ・発端 大手入れ ・強請団 ・取調べの模様 最初の取調べ ・記憶の捏造 ・頭脳の拷問 ・刑務所行き ・カマを掛ける ・上申書(井上福夫) ・上申書(金久平) ・帰宅後 ・当局に望む ・人権蹂躪 ・刑務所 ・ナンセンス ・結論 (...