法難手記

法難手記

頭脳の拷問

茲で特筆すべき事が起った。それはM氏とK氏との両氏から調べられた時の事である。此時は主にM氏が訊問に当ったが、昭和二十三年十一月八日に始まった脱税問題に対する運動費の件が主であった。私は全然記憶にないから答える事が出来ないと言うと、M氏はど...
法難手記

記憶の捏造

之を聞かされる毎に私は気が気じゃない。どうしたらいいのだらう。全然ない記憶を呼び起せと言っても無理だし、呼び起さなければ幾日でも留置されるとしたら、何とかしなければならない。斯んな苦しみをする位なら以前に何か少し位悪い事をしておけばよかった...
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取調べの模様 最初の取調べ

警察に勾留された第一日目は、簡単な取調べで終ったが、第二日目であった。朝飯を済ますや直ちに二階の調室に連れられた。K刑事部長、M刑事部長の二人の外に、S警部といふ人が応援として、静岡市国警本部から此朝出張して来たと言はれた。茲で右の三人に就...
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強請団

此ユスリ団というのは、一、二年前から本教団を狙っており、目的は、巨額の金銭を獲得しようとして、彼の手、此手の策略を用ひて、教団を執拗に揺ぶるのである。噂によると国会議員数人を初め、宗教人、旧右翼系の利者、本教の反対者等々、少くとも十人内外の...
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発端 大手入れ

はしがき中にもある如く、昭和廿五年五月八日未明、突如として青天の霹靂の如く、本教関係の熱海所在の建物六ケ所、小田原一ケ所、合計七ケ所に対し、一大家宅捜索が行はれた。其際動員された警官、無慮八十名と言ふのであるから、如何に大仕掛であったかが判...
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はしがき

此記録は昭和廿五年五月八日発生し、同年七月十二日一段落着いた迄の、私の嘗めた体験記録であって、之によって目下起訴中の私の裁判を有利に導こうなどといふ考えは毫末もない。唯早い内に書かないと記憶を失ふ虞(オソ)れがあるから、筆を執った迄である。...
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・はしがき・発端 大手入れ・強請団・取調べの模様 最初の取調べ・記憶の捏造・頭脳の拷問・刑務所行き・カマを掛ける・上申書(井上福夫)・上申書(金久平)・帰宅後・当局に望む・人権蹂躪・刑務所・ナンセンス・結論(昭和二十五年十月三十日)