2)痛苦

痛みについては以前に触れましたように、浄化作用によって発熱し、固結毒素が溶解され、その液体化したものが体外への出口を求めて進もうとする運動が神経を刺激することによって生じるものです。

『痛みの症状は、盲腸炎、急性腹膜炎、急性腎臓炎、胃及び腸の痙攣、頭痛、歯痛、中耳炎、リュウマチス、各種神経痛等実に多種多様である。(中略)又骨膜炎、骨髄炎、肋骨カリエス等骨に関する痛みの原因は骨膜に凝結した毒素が浄化溶解によって表面へ滲出せんとし、骨そのものに無数の極微な穿孔をする、その為の激痛である。歯根膜炎、中耳炎等もそうである。右の穿孔の窖は病気治癒後速やかに原形に復すのである』
(天国の福音「痛苦」より)

『其他火傷、刀傷、打撲傷等もあるが、之等は病気と異り、自然治癒するのである。然し之等に対し、消毒薬の塗布等を行ふ為に、容易に治癒し難くなる例は非常に多いのである。斯かる場合薬剤を廃し、患部を清水に洗ふだけで自然によく治癒するのである』
(天国の福音「痛苦」より)

『右の如く、病気による痛苦には多種多様あるのであるが、その原因の殆んどが薬毒の為である。薬毒の種類によって、痛みや症状が異ふのである』
(明日の医術「痛苦」より)

(新田博士のコメント)

痛みに関しては、日本医術と現代医学との間に、多々、共通するところがあります。

日本医術では「凝結毒素が溶解されて、液体となった毒素が神経を刺戟する」と説かれていますが、この痛みを感じる神経、すなわち痛覚神経はもちろん筋肉にもありますが、皮膚や粘膜の末端にもあります。そして、その神経が刺激を受けて、その刺激が脳に伝達され、実際には脳で痛みを感じることになるわけです。

日本医術では「痛みの原因は毒素である」としていますが、医学的に見た場合、痛みの原因は毒素だけではなく、頭痛、胆石や尿石の痛み、腹痛、虫垂炎などの内臓の痛み、切り傷等があります。これらの中には毒素が原因の場合もありますが、胆石や腎結石のように胆のうや腎盂の内圧が急に高まるために生ずる痛みや、狭心症のように心臓への酸素や栄養の供給が悪くなったために生ずる痛みもあり、原因はいろいろです。

私たちがときどき経験する切り傷の痛みなどは、医学的には、切った傷口に毒素が出てくるから痛むというように考えられてはいません。切ったためにそこの痛覚神経が刺戟されて痛みとして感じるわけで、直接毒素とは関係がないと考えられます。したがって、痛みの原因は毒素以外にもあるという注釈を付け加えた方がより理解されやすいと思われます。しかし、そのような状況に立ち至った原因が毒素にあるとすれば、痛みの原因は毒素である、あるいは毒素が関係しているといえるかもしれません。