日々を健康で過ごし、天寿を全うしたいとの願いは世界人類共通のものです。WHOが“二十一世紀にはすべての人々に健康を”というスローガンを掲げ、世界的活動を展開しているのもその現れであると言えます。こうした願いにも関わらず、現実には、“長寿社会における子ども・家庭・地域”と題した厚生白書(平成元年版)によりますと、私達の日本を見ただけでも国民の医療費は増え続けており、我が国の疾病構造が大きく変化していることが指摘されています。昭和五十六年以来の死因の第一位はがんであり、現在、心疾患が第二位、脳血管疾患が第三位となっており、それまでの結核等の感染症中心の疾病構造から、がん、循環器疾患等成人病中心の疾病構造に変わってきているのです。
がんをはじめとした治癒困難な病気は中々消え去らず、さらに最近では、小児成人病という言葉があるように、かつては四十代以降に多くみられた成人病が低年齢の子供達にまで及んできているという状況が生じています。また、地球環境の汚染に伴う人体の汚染なども世界的規模で広まりつつあり、人間の健康に影響を与えています。
こうしたことは以前にはみられなかった現象です。深刻の度を増しているこうした健康問題の背景には、現代の不自然な食生活(食品添加物や化学調味料などの有害物質)やアルコール、薬、ストレス、肉体的疲労などが原因となって、人体の機能、特に肝臓や腎臓の機能が低下し、虚弱な体質となってきているということや、体調の変化や老化などによる免疫機能の低下、あるいはまた人体にとって有害となり、自然治癒力を弱めてしまうことになりかねない異物(薬品や農薬など)が知らず識らずのうちに体内に入ってしまう状況に現代人がおかれているということなどがあります。
有史以来人間は病苦との闘いでしたが、このように見てきますと、今現在も様々な病気によって毎日の生活が脅かされ、悩まされ続けていると言っても過言ではないでしょう。物質文化の繁栄の一方で、原因不明の病気、解決不可能な病気が、心身両面にわたって出現しており、人間自身は未だ生命の安全が保証され、真の健康が達成された文明世界の住人とはなっていないのです。