薬毒(一)

茲で薬毒に就いて、一層詳しく説いてみるが、曩にかいた如く薬は悉く毒であって、毒で浄化を停止する。それが種々の病原となる事は大体分ったであらうが、薬にも漢薬と洋薬との二種あり、どちらも特質があるから、一応は知っておく必要がある。

勿論効果に於ても夫々の違ひさがあって、例へば漢薬であるが、勿論草根木皮が原料となってをり、伝説によれば支那前漢時代、神農といふ神の如き偉人が現はれ、病を治す方法として山野から種々の草木を採取し、之を薬として服ませた処、苦痛が減ったので、之こそ病を治すものと思ひ、それから今日迄続いたのである。勿論今日でさへ薬は毒である事を知らない位だから、況んやその時代に於てをやである。何しろ一時的乍らも苦痛が緩和するので、薬の効果を信じ今日に至ったのである。

そうして漢方薬は量が非常に多いので、左程でない毒も案外害は大きいもので、而もお茶代りに飲む人さえあるのだから厄介な話である。又漢薬常用者は、特に顔色が蒼白であるからよく分る。中国人の殆んどが黄色なのはその為であらう。又之が腎臓に及ぼす影響も相当なもので、浮腫の原因となる。中年以上の婦人で青ん膨れの人をよく見受けるが、之と思へば間違ひない。

そうして漢薬中毒の痛みは鈍痛が多く、昔花柳界の女で持薬として菜(ドクダミ)、ニンドウなどを飲んだのは、花柳病予防に効果があるからで、つまり湿疹や腫物などの浄化停止に効く為からである。又昔の婦人によくあった癪(シャク)、寸白(スバク)、冷え症などもそれであり、男の疝気(センキ)といって睾丸の痛む病気も同様である。その他男女共通の病としての胃痙攣、脚気、リョウマチ、心臓病などもそれである。

(医学革命の書 昭和二十八年)