食欲不振と羸痩

結核患者が最も恐るるものは食欲不振である。この原因に就て詳細述べてみよう。医療は食欲を増進させようとし、消化薬の連続服用を奨めるが、これが最も悪いのである。何となれば消化薬によって一時は食欲は増進するが、それを持続するに於て、漸次胃が弱るのである。即ち薬剤が消化作用の分担をする以上、それだけ胃の活動は鈍るのは当然である。その結果終に胃は弛緩するので、それが胃下垂である。又消化薬は一旦胃壁に吸収されても、時を経て一種の毒素となって還元し、それが胃壁外へ浸潤し、固結する。その固結が胃を圧迫して消化不良に拍車をかける事になるのである。

次に、結核患者は悉くといひたい程、腎臓及び化膿性腹膜炎を有ってゐる。それが又発熱の原因となり、食欲不振、下痢、咳嗽、疲労等の結核症状の原因ともなるのである。故に私が腎臓、腹膜だけを治療して、結核の治った経験が少なからずあるのである。

次に、世人の知る如く、発熱は味覚に影響し、食欲不振となるものである。又咳嗽及び吐痰薬毒等も食欲不振の原因となる。特に頻繁な咳嗽の為、睡眠を妨げられる場合、食欲に大いに影響するものである。

次に、羸痩(ルイソウ)は結核に附物であるが、此原因は勿論食欲減退と発熱と精神作用によるものであるが、特に発熱が肉体を消耗する事は甚だしいものがある。

次に機械的検査に就て、検討してみよう。

(結核の正体 昭和十八年十一月二十三日)