病気と霊 九、霊的病気の種々相

霊的病気に就て重なるものは右に説いたが右以外にも種々あるのである。死霊が憑依する場合、私の多くの経験によれば、成人者と健康者は憑き難いのである。故に、小児及び衰弱者に限って憑依するので洵に始末が悪いのである。そうして最も恐るべきは、小児が衰弱の結果、如何なる食餌を摂ると雖も、咸(コトゴト)く嘔吐する症状がある。之は死霊が憑依したので、斯様になったのは治癒は困難でその殆んどが斃れるのである。面白い事には、斯様な症状になった日又は死亡の日は、祖霊の命日に中(アタ)る事がよくあるのでその祖霊が憑依した事が推定さるるのである。

次に、霊的憑依の病気で珍らしいもの二三を記いてみよう。その一は、四十歳位の男子で、一日に一回か、二日に一回位、突如として全身が硬直するのである。其時は丁度石地蔵の如く、全身の如何なる個所も全然不動であって、眼も口も開っ放しといふのである。之等も死霊の死の刹那が表はれるのである。二は、十五六歳の男子、十二三の頃、突如発熱、痙攣を起し、顔面変化が起ったのである。その症状は、一見六七十歳の老人の通りの顔で、而も苦悶の形相物凄く、視るに堪へないのである。故に患者は、外出は固より人に顔を合すさへ避けてゐるのである。之等も勿論老人の死の刹那、苦悶したその形相である。三は十歳位の小児、之は生来の症状で、両手両足を縛られた如き形をなし、苦悶に堪へない相貌をしてゐる。これは全く手足を縛られたまま惨死したものと想ふ。

右に説いた例は、何れも死霊の憑依であるが、右の外に生霊の憑依といふ事もある。之等も相当禍ひするのであるが、著るしい病気症状はないから説く必要はないと思ふ。

(明日の医術 第三篇 昭和十八年十月二十三日)