四 土壌と微生物界の神秘

ロデール氏は其著『黄金の土』の中で次の如く言っています。土壌は一般に想像しているように無機物ではない。生きて大いに活動している。そしてそこには、バクテリヤ、放射状菌、かび、こうぼ、藻類その他の微生物が豊富にいる。そのうち動物は原始動物ばかりで、他はすべて微生の植物である。これ等下等な動植物が群生して土壌の生物学的生活を営んでいる。してこれ等の微生物は、過去七五年以上も医学界や、工業界では研究され、活用されていたが、農業界ではほとんど顧みられなかった。……これ等の微生物は地表に近いところでは土壌一グラムの中に数十億もの多数が住んでおるが、地下三フィートも掘り下げるとバクテリヤの数は三〇〇〇乃至四〇〇〇に減少する。微生物の分布は地表四乃至五インチに限られる。そこには彼等の食料となる有機物が豊富にあるからである。

これ等の微生物は土壌中で植物の食物を造るのであるが、根瘤菌のように、直接植物を養うものもある。細菌とバクテリヤは、有機物の分解という大切な役割を果して、土壌とその構造を良好な状態に保つのである。アメリカ農務省の研究家の発見によれば、この作用に二通りあり、その一つは腐敗バクテリヤが粘液を分泌して土壌の微粒を密着して塊とし、降雨によって起る土壌の浸蝕をはばみ、他の植物質を食物とする細菌は糸のような線、すなわち菌糸を出して土粒を大きな塊に結合するのである。また最も知られているのは、窒素固定菌の作用で、荳科植物の根にあって、空中から窒素をひき出すのである。かく土壌の中で互いに相互関係を保ち、藻類はパクテリヤを助け、バクテリヤは原始動物に食料を提供するなど、うまく治った調和社会が存在するのである。

一九三七年、 当時殖産学院の校長であったハワード氏が、 植物と根菌の提携が著しい効果を及ぼすことを発見した。氏は化学肥料で作った所には植物と根菌の提携はない、あっても甚だ貧弱であると言い、また根菌の多い茶樹で、しかも腐植質にとむ土壌でも、化学肥料を施したところでは根菌を認めず、寄生菌が発生しているのを認めた。ほとんどすべての作物は根菌と提携する。すなわち小麦、馬鈴薯、ライグラス、アルファルファ、ほとんどすべての果樹、ゴム、コーヒー、茶、莢豆、甘蔗、バナナ、苺、タバコ、牧草等多数がやはり根菌と提携するのである。化学肥料はこの大切な提携を妨げると言っています。

根菌の仲間である一種にペニシリウム黴がある。約一五年前、英国の科学者フレミング博士が偶然発見したもので、バクテリヤの培養基の中にこの黴がいり込んだところ、その周囲にはっきり空所ができた。同博士はこれをもととして研究を進めた結果ベニシリンの発見となったのである。ペニシリンの発見に刺戟されて多くの医学研究者は、土壌の微生物に注意するようになり、土壌バクテリヤから数多の薬剤を抽出すことに成功している。またバルフォワー夫人は、其著『生きている土壌』のなかに、多くの土壌細菌は、植物に有害な主な土壌中の原始動物を襲って食うことを述べている。

土壌の微生物集団には、正と負と両要素が入り組んだ関係になっていることが明かとなった。土壌の状態が正しい場合には、平均した状態で順調に生活が営まれ、有益な微生物が有害なものをおさえるのである。しかし、もし土壌の状態が破壊されると-化学肥料等によって-病原的要素が勢力をもって、植物を正常に生育しえないのである。

ロデール氏はまたミミズの効用について述べ、化学肥料がミミズを殺し、その効用を奪うことを詳しく説明している。以下はその大要である。

ミミズは土壌の肥沃度をたもつために重要な存在である。土壌の空気の流通を助け、土粒を細かく砕き表土を作るのに役だっている。ミミズの助けがなければ土壌は固結してしまう。ミミズは自然の犂ともいえよう。ミミズは土壌中に孔をうがって空気の流通をよくして土壌微生物の繁殖を促進するし、その孔から雨水がしみこんで流失しないから、作物の生育に必要な湿度をたもつことができる。

かの有名なダーウィンは『腐葉土とミミズ』を著わし、ミミズに関する多年の研究結果を発表している。ダーウィンによるとミミズは穴をうがちながら多量の土壌をのみこみ、 その中にふくまれている消化しやすいものを吸収する。またミミズは新鮮な葉でも、なかば腐った葉でもその他の有機物でも食う。ゆえに葉は土の中へ一フィートから三フィートの深さにひきこまれ、次いで消化を助けるため液体が分泌される。毎年一エーカーにつき一〇トン以上の乾土がミミズの消化器を通過するため、数年毎に全表土がまったくミミズによって処理される。ミミズは偉大な耕作者と称すべきで、単に土壌のみを嚥下するばかりでなく、小さな岩片をものみこんで砕き、更に消化液で細化する。かように岩石が土壌化する作用を早めながら、園芸家の気にいる土壌をつくる助けをするのである。

ミミズは土中に空気をおくり、酸素を植物の根元に十分供給する。ミミズはまた或種の害虫の幼虫を殺す。ミミズの糞は腐植質の最上のものである。ミミズの一生は一、二年でその死体が腐ると良好な肥料となる……。化学肥料はかくも効用多き生物を結局殺してしまうのである。

アルバート・ハワード氏は『黄金の土』に次の如き意味の序文をかいています。

現在世界中で農耕と園芸の方法に革命的な進歩がなされている。その大体の結果を一言にして説明せよといわれるならば、私は「良い収穫と、健康な家畜とそして最後に一番かんじんな健康な人間になくてはならぬ土台は肥えた土壌である」と答えるであろう。肥えた土壌とは、もとにかえすという自然の法則が忠実に応用された新らしい腐植質を含む土をいう。

地球をおおう緑のじゅうたんは―食料全部と工業用原料の大部分―葉緑素と、 それを活動させる太陽エネルギーによっていかされている。その二つには人間の力は全然あずかっていない。それは我々の科学の力も真似し得ず、なおさら改良することなどできない神よりの賜ものなのである。人間はこのじゅうたんののっている土-その中にはカビ、バイキン、ミミズ等という無給の労働群が住んでいる-の世話をすることである。……化学肥料では、土の中に住む有益な生物から空気も、水も食物も温度も、保護物もすべてとりあげてしまうことになり、土の中に住む生物は死んでしまう。……アメリカでは、一年に三五億ドルの金額が種々の疾病の治療のために費されている。若し土地が十分な栄養を与えられていたならば、これらの病気の大部分は起らないですんだであろう云々。

(世界救世教教義 昭和二十六年十月十日)