序にかえて

工学博士 堀岡正家

今を去ること二百有余年、ニュートン出で、万有力の原理が発見され、ここに近世物質万能主義が成立し、更にダルトンは原子説を提唱して物質不滅の原理を完成した。

かくて宇宙万有は、八十余の元素の化合、活動によること、凡ゆる物体は、固体、液体、気体の三種に区別されること。これが唯物論者の鉄則となったのである。

然るに今より約七〇年以前、英国の物理学者クルックスによって、固体にも液体にも気体にもあらざる、即ち物質にあらざる第四体が発見され、一八九一年、ジョン・ストーニはこれに電子と命名した。

其の後キュリー夫人の新元素ラジウム発見により、所謂元素なるものは一定不変のものにあらずして、つねに変化する運命にあるものなることが明瞭となり、数多科学者等の研究と相俟って、凡ゆる元素は、陽核の周囲を陰電子が廻転しつつある姿なることを究明し得たのである。

此の陽核と陰電子の関係は目下尚お科学者に於て研究されつつあるが、相慕的この結合関係を、岡田自観師は愛と観じ、万有悉く愛の心より成ると説くのは洵に妥当と評すべく、創造の神を愛なりとするキリスト教の思想及び根本仏を慈悲心と説く仏教思想に共通するところあるのみならず、科学的基礎の上にたつだけに、基、仏両思想に較べて一層の明確さを有すると言わねばならぬ。

また此の岡田自観師の宇宙観に対し、新進の哲学者須江文学士が縦横より批判せる快文字は、吾等科学者にとって興味極めて深きものがあるのである。