堆肥の効果

そうして自然肥料実施に就いて説明してみると、稲作に対しては稲藁を出来る丈細かく切り、それをよく土に捏ね混ぜるので、これは土を温める為である。又畑土の方は枯葉や枯草の葉筋が軟かくなる位を限度として腐蝕させ、それを土によく混ぜるのである。この理由は土が固まっていると、植物は根伸びの場合、尖根(サキネ)がつかえ伸びが悪いから、固まらないようにするのである。それについて近来よく言われる。根に空気を入れるといいとしているが、これは空気が根にいい訳ではない。只空気が根元に入る位であれば、土が固まっていないからである。これなども農学者の解釈は誤っている。故に理想からいえば浅根の作物は畑土に草葉の堆肥を混ぜるだけでいいが、深根のものは特に畑土一尺位下方に木の葉の堆肥の床を作るといい。これは土が温まるからである。但しその厚さは、深根といっても色々種類があるから、それに応じた厚さにすればいいのである。世人は堆肥にも肥料分があるように思うが、そんな事はない。堆肥の効果は土を固めない為と、土を温める為と、今一つは作物の根際に土乾きがする場合、堆肥を相当敷いておくと、湿り気が保つから乾きを防ぎ得るという、以上三つが堆肥の効果である。

以上によってみても分る如く、自然農法の根本は、土そのものを生かす事である。土を生かすという事は、土壌に人為肥料の如き不純物を用いずどこ迄も清浄を保つのである。そうすれば土壌は邪魔物がないから、本来の性能を充分発揮し得る。然も面白い事には農民は土を休ませるというが、これも間違っている。作物を作れば作る程土は良くなる。人間で言えば働けば働く程健康を増すのと同様で、休ませる程弱るのである。この点なども農民の解釈は逆であって、作物を連続して作る程養分が吸われるとなし、畑を休ませるが、何もかも実に間違っている。この誤りの為連作を不可とし毎年場所を変えるが、これなども論外であって気の毒な程愚かである。

(革命的増産の自然農法解説書 昭和二十八年五月五日)