肥料迷信

そうして前記の経過を説明してみると斯うである。最初の二、三カ月位の間、見劣りがするのは、種子にも田地にも肥毒が残っている為で、時日を経るに従い、土も稲も肥毒が段々抜けてゆくので本来の性能を取戻し、漸次好転するのである。この理は、農民にも分らない筈はないと思う。というのは洒水をしたり、大雨が降ったりした後は、不良田も幾分良好になる。これなどは 全く肥毒が多過ぎたのが洗われて減少した為である。

又農民は少し作物の生育が悪いと客土をし、それで稍良好となるや、農民の解釈は、長い間土の養分を作物に吸われ、土は痩せたのだから、新しい土を入れればよくなるというが、これは誤りで、実は年々の肥毒により、土が衰え痩土となった為で、右の農民の解釈は如何に肥料迷信にかかっているかが分るのである。

(革命的増産の自然農法解説書 昭和二十八年五月五日)