腸疾患で一番多いのは盲腸炎であります。
盲腸炎は、本療法では実に容易に治るのであります。
場所は丁度、臍の一、二寸下から右の方へ寄った所で、医学で謂ふ虫様突起部で、之へ膿が急激に集溜するのであります。

症状は、非常に痛んで熱が出る。 普通手術によって、虫様突起及び膿を除去しなくては生命が危いとしてありますが、本療法では驚く程速かに治ります。大抵二、三回で綺麗に治るんであります。
そうして何の為に膿が盲腸へ集溜するかといひますと、浄化作用によって、便通で排除されよふとする膿が一旦盲腸に滞溜するのであります。そうして一層排除し易からしめん為、高熱で溶解するので、溶解膿が下痢によって排除されるのであります。
此様な訳ですから、自然療法で安静にしておれば、一週間位で確実に治癒するのであります。世人は此事を知らないから心配して手当などする。特に氷冷しますと膿がそこへ固まってしまふので治癒困難になり、生命の危険さへ生ずるので、止むを得ず切開除去しなければならないやうになりますから、手当をするなら寧ろ温罨法(オンアンポウ)の方がいいのであります。
次に最も多いのは、腸加答児でありませう。之は大腸加答児と小腸加答児とあります。大腸の方は重く、小腸は軽いのであります。
原因としては、二種類であります。一は、自然浄化作用に因って、膿が下痢となって排除される場合と、一は、毒物を食った為の中毒作用であります。ですから、毒物を食った覚へがなくて下痢するのは、浄化作用に因るものと思へばいいのであります。
本療法によれば普通一、二回で治ります。
此外に長く肺を患ひ慢性下痢になったのは別で、喘息及び腹膜炎、腎臓等の水膿溜結を溶かすと下痢する事があります。
よく腸炎といふ事を謂ひますが、腸に熱がある場合は、其所に毒素があるので、浄化作用をやれば順調に治ってしまひます。
次に、腸窒扶斯は、私は未だ治療した事はありません。何故なれば、あれは腸へ熱を持つのが最初ですが、其時治療すると速に熱は去(ナ)くなるから、腸チフスになるかも知れぬものでも、それで治って了ふらしいのであります。
又、本当にチフスになったものなら、病院へ入らなければならないから、私の方へは来ない訳であります。
そうしてチフスには、パラチフスと普通のチフスとの二種あります。
パラチフスは、軽症で発疹があるのです。チフスは熱が高いのが特徴で、四十度以上の熱が一週間以上も続く、そしてたふれるのは腸出血の為であります。
之の原因は、腸の内壁の粘膜に黴菌が繁殖して微小な孔を穿ける。其孔へ固形物が触れるから発熱し、重症になれば、穿孔が進んで出血するといふのであります。 此医学の説明は本当だと思ひます。
此病気は、医療に於ても、無薬で、流動食のみで自然療法をしますが、此方法は確実で成績も良いのであります。
次は腸癌ですが、之は直腸に出来易く、直腸から大腸等へ移行して相当大きなものになる場合があります。
絶対治り難いとしてありますが、本療法で非常に治り易いのであります。軽症で一ケ月-重症で三ケ月位であります。
医学の方では、腸癌を手術する場合は、肛門から孔を穿けて、そうして閉塞させ、人工肛門を横腹等へ附けるのですが、其処から始終糞が出て、実に悲惨極まるもので、とても臭くて側へも寄れぬのであります。
次に、悪性の腫物が腸内に出来るのがあります。
癌とよく似て、医学では肉腫といっております。之も非常に治り難く、殆んど不治とされてありますが、本療法によればやはり腸癌と同じく順調に治るのであります。 腸結核は、慢性下痢症で、無痛と有痛とありますが、衰弱が少なければ、容易に一、二週間位で治りますが、衰弱の甚だしいのは治癒困難の場合があります。
腸結核は、肺結核の末期に多いので、腹部を触ってみると非常に熱い。
肺結核と併発性のものは、特に不良であります。
(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)