脚気

此病気は、軽症に於ては膝から下、所謂、脛の辺りの麻痺でありますが、重症となるに従って掌、特に拇指近き部分及び脣等にまで及ぶのであります。但し、婦人にある産後の脚気は右とは異って脚部全体から腹部及び乳の辺りまで麻痺するのであります。
原因は医学で唱える如く、前者にあっては白米中毒であり、後者にあっては、出産に由る残存悪露が浄化作用によって皮膚面へ滲出するのであります。
本療法によれは、一週間乃至二週間位で全治するのであります。
前者の脚気に対しては、普通の米糠を煎って食事の度毎匙一杯宛飲めば「有効」であります。
次に、腎臓の尿毒に因る、擬似脚気ともいふべき症状があります。之は寧ろ真の脚気よりも多い位で、吾々の所へ脚気と言って来る患者が、実は脚気ではなく之が多いのであります。
此症状は殆んど麻痺はなく、脚部全体が重くて、歩行は稍々困難で、多少の痛み又は浮腫があるのであります。
稀には軽症の腹膜炎が原因である事もあります。
本療法によれば一、二週間で全治しますが、治療の場合腎臓部及び腹部を充分施術しなくてはなりません。(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)

脚気

此病気は、誰も知る如く、脚及び手、口脣等の麻痺である。特に脚部に於ては、膝から下の内側である。手は、掌の拇指の付根の辺である。口脣は下脣である。之が真症の脚気であって、非脚気は、脚気と誤診さるる事も多いのである。例へば、膝のガクガクするとか、脚の重いとか、力が無いとかいふ如き症状は、脚気ではないのである。
原因は、真症の脚気に於ては医学で唱ふる如く、全く白米中毒であるから、近来の如く、七分搗又は半搗米なら起らないのである。近来脚気の激減するのは之の証拠である。又西洋の脚気のないのにみても瞭かである。
前述の脚気に非ざる脚気、之は如何にといふに、腎臓の尿毒が脚部へ下流して溜結する場合と、腹膜に集溜せる尿毒が下流する場合と、注射等の薬毒が脚部に溜結する場合等であって、それが浄化作用の為の微熱によって重倦く、ガクガクやフラフラは、毒血が筋肉の運動を妨げるからである。
婦人の血脚気は、全然別の原因にて、之は産後の古血が脚部、腰部、腹部等に移行するのである。尚詳細は婦人病の項に述べる事とする。(医学試稿 昭和十四年)