腹膜炎

腹膜炎(別名腹水病)は、肋膜と同様腹膜と今一つの膜との間に水が溜って、頗る膨大になるものである。之も肋膜炎と同じく、湿性と化膿性とがある。(乾性はない)湿性は水が溜るのである。非常に膨脹して臨月又は臨月以上に大きくなるのがある。原因は腎臓の萎縮の為、余剰尿が滞溜する為と、膀胱から尿が尿道へ通過せんとする時、尿道口に膿結又は尿結が塞ぐ場合があり、その為尿の排泄量減少する為である。萎縮腎を治さない限り全治しないのは勿論である。

医療は利尿剤を使用するが、之は最初は非常に効果がある事があり、殆んど九分迄治癒の状態が、俄然悪化する事がよくある。それは利尿剤に対する逆作用が起る為である。また、医療は穿孔排水方法を採るが、之が非常に悪く、排水すると一旦はよくなるが、必ず再び水が溜る。すると又除る、又溜るといふやうに癖になるが、困った事には溜る期間が段々短縮され、量も其度毎に増へて行くので、何回にも及ぶと益々膨大、臨月の腹よりも大きくなるもので、斯うなると先づ助かる見込はないのである。

化膿性腹膜は、薬毒が膿となって臍を中心に、其周囲に溜結するのであるから、腹水の如き膨満はなく、反って普通より腹部は低い位である。往々気の付かない位のもあって、症状は腹部を圧すると、処々に固結ありて、痛みもあり、時々痛苦、下痢及び腹の張り、食欲不振、嘔吐感、咳嗽等である。之は押すと固い処が所々にあって、圧痛があるからよく分る。然し慢性は軽微の痛みと下痢であって、非常に長くかかり、治るのに数年掛かる者さへある。処が医療は薬で治そうとして服薬をさせるから、実は毒素を追加する事になるので、治るものでも治らない事になって了ふ。

そうして恐ろしいのは彼の急性腹膜炎である。此病気は急激に高熱と共に激痛が伴ひ、殆んど我慢が出来ない程で、患者は海老の如く身を縮めて唸るばかりである。よく盲腸炎を併発する。医療は切開手術を行ふが、之は成績が甚だ悪く、近頃は余り行はないやうである。之も本療法によれば一週間乃至二週間以内で完全に治癒するのである。之は旺盛な浄化であるから青年期に多いのは勿論である。そうして此化膿性腹膜といふ病気は、人により重い軽いはあるが、全然ない人は先づないといってよからう。茲で注意すべきは、よく禅や腹式呼吸、其他の意味で腹に力を入れる人は、そこに毒素が溜結し、腹膜炎が発り易いから注意すべきである。

腹膜炎は、水が溜るのと、膿が溜るのと二種あります。此点丁度、肋膜と同じやうであります。そして膿が溜る方がズーと治りいいんであります。膿の溜ったので随分酷いのがありますが、割合順調に治るのであります。そうして今日、大抵の人は極軽い腹膜炎に罹ってゐるものであります。それは臍の周囲を圧してみて痛くないといふ人は滅多にありません。其所の痛い人は必ず腹膜へ膿が溜って固まってゐるのであります。よく腸炎といふ事を謂ひますが、腸に熱がある場合は、其所に毒素があるので、浄化作用をやれば順調に治ってしまひます。之は化膿性腹膜の浄化作用であるから、自然治癒で治るのである。

水の溜るのは、早期ならよく治るんですが、相当日数を経たものは、容易に治らないのであります。原因としては、肝臓の周囲へ水膿溜結し、その為、腎臓が圧迫されるから、尿が溢出して腹膜へ溜るのであります。相当溜って時日を経過したものは、深部が化膿して固まってゐるので、斯うなったのは殆んど不治とも言ふべきであります。

そうして、最も悪性なのは、肝臓癌が原因での腹膜炎で、不治であります。ですから、腹膜患者は、肝臓部が痛むかを査べる必要があります。押してみて痛めば、肝臓からの腹膜炎であります。肝臓が尿素を腎臓に送る場合、癌の為、腎臓への送流を遮られる結果、肝臓から直接腹膜へ尿素を溢流するのでありますが、腎臓からの尿は稀薄ですが、肝臓からのは濃厚である。それが為重症である訳であります。又利尿剤を続用したものは逆作用が起っておりますから、非常に執拗で治り難いのであります。

腹膜炎は、よく肋膜炎を併発する事があります。又肋膜炎から腹膜炎に移行する事もあります。

腹膜のひどくなったのは随分大きくなります。臨月の腹の大きさよりもっと大きくなります。よく破れないと思ふ位であります。又、卵巣が腫脹して、腹膜炎と同じやうな症状になります。之の悪性は極端に膨脹し、終に破裂する事がありますが、破裂すれば、汚水が排泄されて速かに治癒するのであります。此際医療による切開法も効果があります。

〔浄霊箇所〕
腹部、痛みのあるところ、発熱部、背面腎臓部

腹膜炎(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
腸疾患(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
腹膜炎(医学試稿 昭和十四年)
腸炎(医学試稿 昭和十四年)
腹膜炎(文明の創造 昭和二十七年)