化膿性肋膜炎

之は湿性肋膜炎で水が溜るやうに、その個所に膿が溜るのであります。最初から膿が溜るのと、湿性肋膜が長引いて化膿性になるのと両方あります。 普通、悪性とされてゐますが、吾々の方では、とても治りいいのであります。随分ひどいのも治るのであります。「湿性肋膜が化膿性肋膜になり」又は、「本来の化膿性肋膜のその膿が、肺に浸潤して、痰になって出る」場合があります。此場合よく肺結核と診られるのであります。

以前三十位の婦人で、某大病院に入院してゐたんですが、私が行ってみると、背中へ孔を穿けて毎日膿を除ってゐた。そして断えず膿が出る。咳一つしても、息を一寸深くしてもダラダラと牛乳のやうな膿が流れ出るのでした。段々衰弱してゆくので、終に退院して私の方へ治療に来たのです。すると、傷口には「ガーゼ」が細く入れてある。そして其穴が塞がるといけないからといふので、近日もう一個所大きく切る事になってゐたのであります。その穴は、針の穴位になってゐたんですが、私の所へ来てからガーゼを詰めなかったので、翌日穴は塞がってしまった。その日治療に行ってみると、其婦人は御亭主の前で泣いてゐる。『何故泣いてゐるのか』と訊くと「実は、傷が塞がると、膿が頭へ昇って脳症を起し、生命がないとの事を聞いてゐるから、穴が塞がった以上もう生命がない」と絶望してゐるのであります。「それではもう一遍病院へ行って切ってもらったら」と御亭主は奨めるけれど、「もう今更再び病院は嫌だ」と御本人は言ってゐる。それで私は『そんな事はない。外から膿を溶かせるから』と慰めた所まあ、半信半疑で兎に角そのままになった。そのうち段々具合がよくなって、食欲はつき、歩いて便所へ行けるやうになった。そして一週間程経ったらお正月で、お雑煮を三杯も喰べたのであります。そして一ケ月余りですっかり治ったのであります。これは化膿性肋膜炎でも、随分ひどいものだったのですが、今でもピンピンしております。

〔浄霊箇所〕
肩、背面腎臓部、肋膜部

(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)