世の中は、段々進んで箆棒に、便利になったは良いけれど、それと一緒に何も彼も、インチキ誤魔化し御一緒に、進んで来たとはうっかりと、気も許せない娑婆じゃわい。インチキの中にも種々の、インチキらしいインチキや、裃着けた御立派な、インチキさへも御座るとは、コリャ又可笑しな事じゃわい。何でもアラ見の此阿呆の、眼玉に映ったり又耳に、入った代物どしどしと、片っ端から書いてみる。
之を御覧に相成って、面白ければ笑ふがいい、腹が立ったら怒るんだね、退屈するならやめるのさ、見る人なぞに気兼ねしちゃ、言ひ度い事なんか言へやせぬ。
人の書くよな月次な、見方や文句は大嫌ひ、ひとりよがりな此阿呆、世の中ズラッと見渡したら、どれも之もがコンマ以下、凡暗野郎の鉢合せ、博士様だと威張っても、親の財布で横文字の数を買入れウントコさと、ケチな頭へ詰込んだ、丈のものだとしてをいて、ジャーナリズムやインテリなど、大層らしく屁理屈を、言った所で飯を食ふ、種とチッとばかり名を売りたい、ケチな虚栄心の為じゃらう、などとはあんまり悪口にも、程があるぞと肩を張り、眼を釣り上げて口先を、尖がらかそうとする所を、気を落着けて先づ胸に、手を宛てよっく此阿呆の、寝言を読んで貰ひ度い。
之程誤魔化しインチキの、沢山あるのに只の一人も、気が着かないとはインテリも、ジャーナリストも眼の玉は、節穴同然耳の方は、木耳(キクラゲ)同然と言はれても、ヨモヤ文句は御座るまい。それじゃによって此阿呆が、片っ端から世の中の、インチキ(アバ)いて後学の、為にボツボツ書き立てて、御覧に入れるとしやふで御座る。
今年の寒さはあんまりで、鉄道省が御自慢の舶来上等の除雪車も、手も足も出ない為体(テイタラク)、文明を誇る未開人が、何かと言へば大自然、征服をするのだなどとぬかし、黄色い嘴からほざいても、自然とやらの先生は、いと大マカに文明の、利器に欠伸をさせてゐる。
此雪征めの途轍もない、寒さをいつも知ったか振の、口出す癖の気象台の、偉い御方が大宇宙を、見透してゐる様な口吻で、相も変らぬ太陽の黒点活動の為じゃといふ。一体全体黒点は、如何なるもので此寒さと、如何なる関係あるなどと、言ふ理由などソッチ除け、唯判らない事は太陽の、何でも彼んでも黒点の為じゃとけつかる一点張り、洵に以て黒点こそは、可い面の皮では御座らぬか。
とは言ふものの気象台の、御方は御世辞じゃ御座らぬが、ホントに偉いと感心を、阿呆仕ってゐるので御座る。それは外ではないけれど、何でも彼んでも太陽の、黒点じゃと言って片付けりゃ、ボロは絶対出っこはない。それは嘘じゃと太陽へ、人間様がはるばると、行って調べる事なんか、迚も出来っこない事を、百も承知での御発表、と感心は仕っても、実は本元は毛唐奴の、偉いか偉くないか知らないが、理学者とやらが其元祖、それを真似する丈じゃから、褒めて可いやら悪いやら、然し未だまだ本当に、感心を致す事がある。
それは天気の予報とやら、先づ其文句は巧いもの「明日の天気は晴天で、曇になるか判らない、所によっては小雨など、降るかも知れぬ」といふので御座る。之では天気でも曇でも、雨でも残らず当るといふ、珍妙不思議な迷文句、どんな天下の売卜者(バイボクシャ)も、此文句には敵ふまい。然し考えてみりゃ之程の、文句を作るといふ訳は、自体低気圧といふ奴の、気紛れ過ぎるその為じゃから、茲で阿呆が苦情やら、悪口いふのは気象台の、御方じゃ御座らぬ低気圧の、気紛れ野郎に言ふので御座る。
(昭和十年)