療術師組合結成式 祝辞

本日茲に東京都療術師組合結成に膺(アタ)り、私は衷心より慶賀の意を表したいのであります。過去数十年来茨の道を歩み来った効あって、本組合結成の運びに迄立到った事は、如何に諸君が隠忍自重斯道に尽瘁(ジンスイ)し来ったかは明かで、之を想ふ時洵に感慨に堪へぬものがあります。

御承知の如く、今日迄の医学は大体西洋、漢方の両様のみで、真の日本医学はなかったのであります。之に対し私は日本医学なるものも生れていい、否生れなければならないと思ふと共に、それは今日の民間療法の完成でなくて何であるかといふ事であります。

世界はより優秀なる新文化が生れる事によってのみ進歩の過程があります。此意味に於て私は、真に治病上力ある医術を創造されん事を諸君に望みたいのであります。 此度の侵略戦争によって、日本否日本人が世界から如何に信を失ったかは諸君も御存知の通りであります。之を挽回する唯一の道は世界人類の福祉を増進する新文化を、日本人の手によって作り出す以外ない事を確信致します。

此意味に於て吾々の責務の如何に重大なるかを痛感する次第であります。之を以て本組合結成式の祝辞に代へたいと思ひます。


昭和二十一年十一月三日
東京都療術師組合
顧問岡田茂吉

(昭和二十一年十一月三日)