今回拙著「天国の福音」御検閲相成たる結果を見るに、最重要部面は殆んど削除され居り洵に当惑致しました。従而再度の御検閲を願ひ、該著書の如何に人類の福祉に貢献すべき将来性のあるかを充分認識せられ、是非とも全面的許可相成度切に希望致します。右に就きその詳細なる理由を左に開陳致します。
一、著書の骨子ともいふべき私の説く処の理論が、現代医学の大体反対である事は、既に、御判りと思ひます。由来文化の進歩は、既成文化の否定によって生れる事は、幾多歴史の示す処であります。故に既成文化の枠より離脱さるればさるる程、それは進歩の度のより高い事であります。此理によって既成医学の框(カマチ)によって検討する時、私の説は異端とも逆説とも見らるるのは止むを得ない事と思ひます。
然し乍ら真理は永遠の生命力を有するものであるから、私の説を世に問ふ場合、非真理であれば自然消滅は当然の運命であると共に、もし真理であるとすれば、人類に齎(モタラ)す福祉は測り知るべからざるものであらう。此意味に於て既成文化即ち既成医学を以て無上の真理となし、その框内に入らざるものは不可として抹殺せんとする態度は、文化の進歩を抑圧する処の非文化的行為とならざるを得ないであらう。
吾々日本人は永い間封建的桎梏(シッコク)の下に呻吟し、言はんとする処も、発表せんとする説も、当局の無理解に災ひせられ如何ともなし難かったのであります。然るに敗戦の結果として、貴国によって民主主義の下、言論出版の自由は許され、吾々は如何に蘇生され、歓喜に燃え、貴国の恩恵に感激したでありませう。それと共に、貴国の人類愛的キリスト教精神と言論出版に対する自由主義が、貴国今日の偉大なる進歩発展の素因となった事を痛感するのであります。
私が発見した新医学は、病理と実績に於て、既成医学に比し比較にならぬ程の進歩と優秀であるかは、現在無数の病者が救はれつつある現実が雄弁に物語っております。私は独り日本人のみでなく、全世界人類から病患を滅消し、心身共に健全なる平和世界の建設に資したい念願であって、些かも私心や野心のない事は、茲に保証致すのであります。此意味に於て、何卒再検討の労をとられ、熟読玩味せられ、許可せられん事を、世界人類救済の名に於て切望する次第であります。
(昭和二十二年)