愛和会趣意書

抑々、数千年来の人類史は何を物語ってゐるであらうか。時に戦争あり、時に天災あり、暗黒は人類をして絶望状態に陥らしむる事あるも、心を潜め歴史を通観する時、駸々乎として底止するなき進歩の跡歴然たるものを看取なし得るのである。言ふ迄もなく、世界人類は一定の目標に向って絶間ない進歩を続けつつある事実は疑ふ余地はない。

然らば此一大目標とは何であるか。惟ふに宇宙の支配者たる神の意図である事である。即ち理想世界たる地上天国の出現である。キリストの所謂「天国は近づけり、悔改めよ」とは此事を指したものであらう。然し乍ら問題はその「時」であるが、吾等はその「時」が今や目前に薄(セマ)りつつある事を確信するのである。何となればその可能の鍵を吾等は握り得たからである。

地上天国とは如何なる世界であるかを端的に言へば、病貧争の三大災厄絶無の世界と信ずるのである。之は何人と雖も思考し得る事は勿論であるが、唯その実現の不可能を想はざるものはあるまい。然し乍ら吾等は何の疑ひもなく、其実現の可能を信ずるのである。それを先づ茲に略記してみよう。

そうして病貧争の三大災厄なるもののその根源は何といっても病患であらう。戦争の原因が物の不足が重なるものであり、物の不足は病患が重なる原因である事は個人に於ても国家に於てもそうであらう。思想の悪化も不健康が原因である事は之亦否定し得ない事実である。

人類が数千年来、凡ゆる不幸の根元である病患に対し、如何に死闘を続け来ったかは何人も知る処であると共に、未だ以て解決の緒にさへ着かざる事実をみるに於て、病患絶滅などとは痴人の夢としか想はないであらう。

然るに、茲に驚くべき一大発見が出現した。それは岡田茂吉氏創成に係る日本浄化療法なる新しき医術である。之は到底信ずべからざる程の驚異的医術であって、恐らく紙上の説明では信ずる事は困難であらう。信じ得るには体験か実験より外に方法はない。ただ難病治癒者、それの実見者等が、その余りに驚異的効果に対し、その術を修得すべき意欲を起すのである。

受講者は受講後数ケ月にして博士の見放したる患者、拾数年の痼疾(コシツ)等の重症難症等を治癒し得らるるのであるから、如何なるものであるかを知るであらう。勿論薬剤も機械も必要はないから、全世界如何なる僻地、蕃地に赴き、彼等に恩恵を施す事も容易であらう。

本浄化療法の普及した社会を想像すれば、各種伝染病は五分の一以下とならう。結核は三分の一以下は勿論で、其他種々の病患を平均して五分の一以下に減ずる事は断言なし得るのである。となれば、現在本療法修得者にして伝染病に罹患する者は皆無といって可い程である。而も本浄化療法を習得し徹底し得る程健康は増進する意味に於て、人類からの病者漸減は当然の帰結である。

右は聊かの誇張なき事実であって、斯の如き医術は人類の経験にない事であるから、法的扱ひに於ては種々の困難を伴ふ事は止むを得ない事であらう。然し乍ら現在の如き病者氾濫時代に於ては、一日も忽せに出来ない重大問題であるから、法的字句に捉はるる事なく大乗的見地よりの御取扱ひを以て臨まれん事を、世界人類の名に於て切に希望するのである。

以上の如き目的の下に本会は天国化運動を興さんとするものである。先づ個人を天国化し、町村を天国化し、国家を天国化し、世界をして天国化す所謂地上天国の出現である。之は恐らく長年月を要するであらう。然し乍ら、此聖なる事業によって幾分なりとも人類向上に資する事あらば幸ひであると共に、神の使命に些かなりとも酬ゆるを得ば限りなき欣びである。

本会の方針としては、宗教部、治療部、社会事業部の三本建として進む方針であるが、宗教は一種類に定着する事なく、如何なる宗教信仰も自由である。

(昭和二十二年八月)