本会ハ全世界凡ユル国家ノ武装ヲ解除シ、国境ヲ撤廃シ、理想的平和世界ノ実現ヲ期ス。
綱領
一、本会ノ目的達成ノ基本トシテ、人類共通ノ三大禍タル病患、貧困、戦争ノ絶滅ヲ 期ス。
一、文化ハ如何ニ進歩スルト雖モ、人類ノ幸福ハソレニ伴ハザルノミナラズ、反ッテ 背馳(ﾊｲﾁ)スル現実ハ何ヲ物語ルモノナリヤ。之ハ全ク既成文化ノ根本ニ一大欠陥 ノ伏在スルガ為ナリ。
一、右欠陥ノ除去ニヨッテノミ目的ハ達成セラルベシ。吾等ハ業(ｽﾃﾞ)ニソノ欠陥ノ発 見ニ成功スルト共ニ、ソノ除去ノ可能ヲ信ズルモノナリ。
梗概
全人類の三大苦悩たる戦争、貧困、病患に対する根本的解決の方法ありやといふに、之は何人と雖も痴人の夢に過ぎないものと思惟するであらう。然るに吾等はその実現の可能性を確信し得ると共に、茲にその具体的意見を開陳するのである。一、今や正に人類世界に於ける戦争は終末を告げたのである。顧みれば過去の歴史のその大部分は戦争の記録でしかなかった。凡ゆる民族もその政府も、力の大半は常に戦争準備に費やされて来た事である。
勿論、侵略国も被侵略国も、其国の一般民衆は被害者であった。唯だ少数特権者のみの利得に終った事はあまりにも明かである。此意味に於て、各国民衆が戦争を厭ひ、平和を翹望(ｷﾞｮｳﾎﾞｳ)する事の熱烈であるに拘はらず、現実は戦争の勃発を喰止め得ないばかりか益々大となり、その惨禍は愈よ惨烈極まるに至った。今次大戦に至っては、人類破滅的の様相をさへ呈するに至った事は何を示唆してゐるのであらうか。
吾等は今次大戦の終末に当って、驚くべき二大事実否二大収穫を得た事に気付くのである。その第一は原子爆弾の発明であり、第二は戦勝国が敗戦国に対する措置(ｿﾁ)である。
第一の事実を採上げて稽(ｶﾝｶﾞ)ふる時、現在此発明は米国のみであるが、他の国家に於けるそれは恐らく時の問題でしかあるまい。従而次の戦争が儻(ﾓ)し起るとすれば、その惨禍は蓋し人類の破滅にまで臻(ｲﾀ)る事は想像に難からないのである。之によって考ふる時、最早戦争不可能の時代に入った事を誰か否定し得よう。
第二は敗戦国に対する戦勝国の措置である。前大戦までは敗戦国は、賠償金と元首並びに重(ｵﾓ)なる戦争主犯者の処刑等に過ぎなかったのであるが、今次大戦に於けるそれは全然様相を異にしてゐる。即ち戦争再発に対する防止手段の極めて徹底化せる事である。即ち強力なる武装解除、政治経済教育等凡ゆる部面に渉って微に入り細に入り革命的変換を行ふと共に、戦争犯罪者に対する広範囲に及ぶ処刑である。何れも新機軸的方法である。此によって是を観れば日本も独逸も、今後如何なる英傑が出現すると雖も、戦争は夢想だも為し得ないであらう。
以上の事実によって観る時、戦争はもはや終末を誥(ﾂ)げたのである。
次は、貧困に関する解決である。此問題も戦争の影響による事も相当認め得るが、仮令平和が持続すると雖も、解決点に至る事は予想し得られないのである。又彼のマルクスの理論を信奉する人等の手に委ねたとしても、到底解決はなし得られようとは想はれないのである。
そうして現在最も全盛期にある米国と雖も、ストライキや失業者群の重圧に如何に悩まされつつあるかは誰も知る所である。之等の事実によってみても、今日迄の経済機構に一大欠陥の伏在する事は何人と雖も認めない訳にはゆかないであらう。然るに吾等は、之に対する解決法を把握し得た事を信ずるのである。
次は、人類の健康問題である。之は如何なる民族と雖も、既存医学の進歩によって解決を与へらるべきものと信じ、各国とも政府、医学者、医師等の努力と莫大なる費額を投じつつあるに係はらず、現実は些かの進歩をも認め得ないばかりか、寧ろその逆効果に悩んでゐる状態である。即ち、英国を初め各文化民族の人口増加率逓減や、病者の氾濫である。此問題に就ても、吾等は一大欠陥の伏在してゐる事を発見すると共に、其解決法を把握し得たのである。
以上の如く、三大苦悩の解決が可能である事の発見が確定したる以上、一日も速かにそれの実現に向って全世界の有識者等の協力を須(ﾏ)つ所以であり、茲に其先駆者として吾等は起たんとするのである。
（昭和二十二年五月）