今日医師諸君は勿論の事、インテリ階級の人達は例外なく信仰で病気が治る事実に対し、決って左の如き解釈をする。大体病気といふものは、病は気からといって精神的影響は案外大きいものであるから、信仰で病気を治そうとする場合、其宗教の教師などは、神仏の利益を過大に説き、言葉巧みに必ず治るやうにいふので、何しろそれ迄医療其他の療法でも治らないで困っている際とて、まともに信じて了い、先づ精神的に快方に向ふので別段神仏の利益ではない事は勿論である、という観方である。そんな訳だから、本教の治病奇蹟がどんなに素晴しいと聞かされても、右のやうな解釈で片附けて了ふのであるから、吾々は憤慨を通り越して呆れるばかりである。尤もそう思ふのも無理はないかも知れない。
何故なれば、今日迄の信仰療法の多くがそれであるからで、本教もそう見られるのであらう。処が本教の病気治しは、それらとは根本的に異っている事で、それを之から詳しくかいてみるが、先づ本教へ治療を乞ひに来る限りの人々は、勿論最初から疑っている。それも無理はない。何しろ新聞雑誌は固より、大部分の社会人殊に知識人などは必ずと言ひたい程病気は医薬で治すもので、而も今日の如く素晴しい進歩した医学であるから、之より外に治るものは世の中にない。
而も最近アメリカで発見の新薬や精巧な機械、手術の進歩等々をみても分る通りで、先づ安心して委せられるのであるから、そんな新宗教の病気治しなどは問題にならないではないか。だから、そんなものを信用すると飛んでもない事になるかもしれない、それこそ迷信以外の何物でもない、と、尤もらしく言はれるので、大抵な人はそれに乗って了ひ、度々機会があっても逃して了ふのはよく聞くのである。
処が病気の方は快くなる処か、益々悪化し、遂には死の一歩手前にまで追ひ詰められる結果、自分から医療に愛想をつかし、本教に縋るやうになるが、そういふ人は極く運のいい人で、大部分の人は医学に嵌り切ったまゝ御国替となるので、気の毒なものである。中には病気は治らないばかりか、金は掛かり放題、苦しみは増すばかりと来ては、迷はざるを得なくなり、何かいい方法はないものかと煩悶の際、偶々本教の話を聞いても、之程科学が進歩した今日、そんな不思議な事があって堪るものかと、テンデ話にならないから、外にどうしやうもないので、では瞞されるつもりで一度試してみよう位の肚でやって来る人が大部分で、初めから信ずる人など殆んどないといってもいい。
としたら精神作用など微塵もない筈である。処が来てみると、医学の素養など全然なく、風采のあがらない先生らしい御仁が、薬も機械も使はず、身体にも触れず、只空間に手を翳すだけなので唖然として了ひ、大病院や博士でも治らない之程の大病が、あんな他愛ない行り方で治るなどとはどうしても思へない。だが折角来たので帰る訳にもゆかず、マァー一度だけ試してみようとやって貰ふと、之は又何たる不思議、忽ち病気以来嘗てない程のいい気持になり、苦痛も軽くなるので愈々分らなくなる。
然し分っても分らないでも快くさへなりゃいいといふ訳で、どんな頑固な人でも、無神論者でも一度に頭を下げ、百八十度の転換となるので、之が殆んどの人の経路である。以上の事実を仔細にみても本教治療法の何処に精神的狙ひがあるかという事である。処がそれに引換へ、医学の方はどうであろうか。寧ろ精神面の方は実に遺憾なく調っている。
先づ当局はじめ言論機関、学校教育等々医学の進歩を旺んに唱え、之以上のものはないとして、病気になったら手遅れになるな、一刻も早く医師に診て貰ひ其指示通りにせよ、それが正しい方法で、決して外の療法などに迷ってはいけないと極力注意する。而も立派な大病院、有名な博士、完備せる施設、精巧な機械、薬等々実に至れり尽せりで、之を見たゞけでもどんな病気でも治りそうに思はれ、安心して委せ、するのが今日の常識となっている。此様な訳で医学を信ずる人はあっても疑ふ人など殆んどないのは誰も知る通りである。
以上によってみても、医学に対する信頼は百パーセントであるに反し、吾々の方の信用は零よりもマイナスである。にも拘はらず、其結果は散々医療で治らない病人が、我方へ来るやドシドシ治って了ふのであるから、其治病力の差は、月とスッポンといっていい位で、此事実は公平に言へば、現代医学こそ迷信であり、我医学こそ正真であると断言して憚らないのである。
つまり医学を信じて生命を失ふか、信じないで助かるかのどちらかであると曰ったら、恐らく之を読んで愕然としない人はあるまい。然し歴史的にみても分る通り、時代の変遷は昨日の真理も今日の逆理となる事さえ往々あるのであるから、敢て不思議ともいへまい。此様な明かな道理が今日迄分らなかったのは、全く過去の亡霊に取憑かれていたのは勿論、それを発見する人が出なかったからであらう。
又世間斯ういう人がよくある。若しそんな事で病気が治るとしたら、医者も薬も要らないではないかと言ふのである。全く其通りで、医者や薬が無くなったら、世の中に病人はなくなると答えざるを得ないのである。以上の如く現代医学こそ世界的迷信の最大なるものであるから、人類から病を無くすとしたら、何よりも此迷信を打破する事で、之が先決問題であらう。
（昭和二十七年十二月二十六日）