私が常に言ふ事は、宗教の真髄は奇蹟に在る。宗教即奇蹟といってもいいとする。何となれば如何程深淵な理論を並べても、病気一つ治し得ないでは何等の価値がないからである。よく現当利益を非難する人があるが、之は大いに間違ってゐる。甚だ失礼だが、之は現当利益のない宗教が、その宗教を価値づける為に作った説としか思はれない。
本教に入信するものの殆んどといひたい程動機は現当利益からである。従而本教の唱える宗教理論の方は、入信してから初めて知る位である。とすれば何故本教には奇蹟が多いかで、此事は皆知りたがってゐる処であるから、茲で簡単にかいてみよう。
本教の出生は日未だ浅いが、実は私が企画したものでは全然ない。全く観世音菩薩が時期到来によって、因縁ある私の肉体を行使され始めたのであるから、実は菩薩御自身が開教されたものである。従而菩薩は、観音力を私を通じて、自由無碍に発揮させ給ひ、救世の大業をなされつつあるので、奇蹟の顕はれるのは当然である。故に以上の意味さえ信じられるとしたら、何の疑ひもなくすべては首肯され得る筈である。此著の初めの方には、私が遭遇した奇蹟の体験談数種を掲載したが、私自身が確固たる信念を得たのも、之等の奇蹟が与って力あったのは勿論である。右に続いて信者からの報告の無数にある中からその一部を集録したものである。
（自観叢書四 昭和二十四年十月五日）
序文
自観叢書