ノントー銀行

町田ノントー氏がイヤデモ応でも、総裁に祭り上げられた訳を内々でチョッピリ打ち明けてみよう。

実はこうなんで御座る。

若しか、此の六十七議会で解散ていふことにでもなれば、早速入用なのは佐渡のお土で、抜目のない若槻どんは、尻に帆をかけサッサと逃げた後なので、差し当りこれぞと思ふアリソウなのを物色した処、どうしてもノントー氏をおいては、外には鳥掴(チョット)無さそうなので遮二無二舁(カツ)ぎ上た次第で御座る。

先づ二三百万は確といふ話ぢゃから当分、民政党も台所安泰といふ訳、道理で此の度の議会で解散なんか屁でもないといふ如(ヨウ)な、みんなの顔付、いつまで経っても金が物言ふ政党政治ぢゃ、解消運動も起るのは当り前ぢゃ哩(ワイ)、先づはノントー銀行のいわれ、因縁斯くの通りさ。

(東方の光三号 昭和十年二月二十三日)