縁日の植木屋

客、岡田某「此の追加木は幾何(イクラ)だね」
植木屋鈴木某「ヘエーまあギリギリ決着一億八千万円で」
客「フーン随分高いね、ウンと負けないか」
客木屋「イヤ負かりません、実際お掛値は無いんで」
客「冗談ぢゃない、余り高過ぎるよ。それに俺は今し方、随分散財した後で、財布が乏しいんだから、どうだ、ウンと気張って一千五百万円に負からないか」
客木屋「エーッ、仕方がねえ、十分一にもならねえんだが、不景気の此の節柄思ひ切って負けちまへ」

(東方の光三号 昭和十年二月二十三日)