一切の不幸は病気から

凡そ人間としての最大欲求は幸福である事は、今更言う必要はない位だが、幸福とは勿論不幸の反対で有ってみれば、幸福者たらんとするには不幸をなくす事で、之も分り切った話である。とすれば先づ不幸その物の実体を把握する事である。では一体不幸なるものは何処から来たものであるかというと、普通の考えから言えば心の持ちようが間違っているとか、行いが悪いからだとか、両方であるからだとか、又は生れつき運が悪い為とか言うであろうが、成程、それも確かにあるにはあるが、それよりも現実的で最もハッキリしているのは、何と言っても病気であろう。処が意外にも病気というものの原因は薬毒であるので、結果から言っても薬剤が人間の不幸を作っている訳である。

何と驚くべきではなかろうか、此信じられぬ程の理由が断然真実であるとしたら、人間は此事が判らない限り、不幸から脱れる事は絶対出来ないのは当然である。処が衆知の如く、今迄は逆に薬剤を以て、人間の健康保持に最も必要なものと思っていた其誤解である。凡そ世の中に間違いも多いが、之程の間違いは先づないであろう。そうして不幸の原因が病気である事の例として、近頃流行る一家心中にしろ、原因は家族の誰かが病気して金を費い果し、窮乏のドン底に陥り、生きてゆけないというのが其殆んどであろう。其他家庭の不和は固より、凡ゆる争いや裁判沙汰等も、悉くといいたい程金銭が原因であり、其又原因が病気である。尤も中には生来の我欲から争う人もないではないが、大部分は貧乏が原因である。又自殺者の殆んどは失恋等もあるにはあるが、大方は病苦とそれに伴う貧乏が因であるのは勿論である。そうして以上は悉く肉体的病気が原因であるが、此外に精神的病気のある事を忘れてはならない。精神的病気とは勿論不健全な思想であるが、之等も私の長い経験によればそういう人は健康そうにみえても必ず肉体的欠陥があって、それが不良な思想を生むのである。共産主義者に結核患者の多いのも衆知の事実である。そうして之が大にしては戦争や社会的暴動の原因ともなり、小にしては個人的争い、家庭争議、不純な恋愛等にもなるのであるから、之等から受ける社会や国家の犠牲損失等は、蓋し甚大なものがあろう。何よりも日本に於てさえ、今以て社会的不幸な人々をよく査べてみると、原因は今次の戦争の為である事が其殆んどである。而も戦争の影響は、直接戦争に干与した者のみではなく一般もそうである。今日最も悩みとされているインフレや主食が足りない、電力が不足だ、国土が狭くなったから産児制限、等々によっても明かである。処が驚いた事には戦争は独り敗戦国のみではない。戦勝国にも相当な悩みがある。彼の英国にしろ、今以て食糧不足で悲鳴を挙げてをり、何しろ一週間に玉子一個とか、チャーチル内閣になってからも今迄牛肉の不足をハムで補っていたものが、最近ではハムさえ減らすというのだそうだから、推して知るべきである。

以上肉体の病気と精神の病気とに就てザットかいてみたが、要するに人間一切の不幸の原因は、病気である事は一点の争う余地はあるまい。としたら此意味に於て本教の目標である病貧争絶無の世界と雖も其基本条件としては、ヤハリ病気の解決より外にないのである。即ち人類から全く病が消滅されるとしたら、それだけで地上天国は実現するのである。本教が何よりも病気治療に全力を注いでいるのも、右の意味に外ならないのであるが本当の事を知らない現代社会は不完全極まる医学を信頼して病気を減らそうとするのであるから、予期の如くゆかない処か反って霊肉共に病気を作りつつあるのは、以上説いた処にみても分るであろう。故に吾々から見れば現代医学は多額な金を費い、無益な努力を重ねつついるのであるから、其迷蒙たるや実に恐るべきものといえよう。それに対し本教に於ても、其啓蒙に全力を尽しつつあるのであるが、何しろ長い間の根強い迷信であるから、それを打破するのは容易な業でないのは勿論である。然るに喜ぶべし神は私という人間を選ばれて、病気の根源を明示されると共に、治病の方法をも与え給うたのであるから、不幸から脱れたい人は、一刻も早く本教へ縋る事である。必ず君等の満足のゆく事は、断言して憚らないのである。

（栄光百三十四号　昭和二十六年十二月十二日）