此病気も真症と擬似と両方ある。真症は霊的であるからそれを書いてみよう。此病気は胃部に固結が出来るのであって、初めは気のつかない位の小さなものが漸次膨大して終に拳大又はそれ以上に及ぶものさへある。そうして右の固結が胃又は幽門を圧迫するので食欲不振となり、痛苦を伴ひ、衰弱の結果死に到るのである。右の固結は頗る硬度であって、大なるものは固結が集合してゐる如く指頭を以て探れば、柔軟なる中に多くの硬い大小の塊がある。そうして真症胃癌の特異性としては、末期に到るに従ひ、頻繁なる嘔吐がある事である。其場合、吐瀉物は透明なるヌラであって、その量の多き事おどろくべき程で、殆んど無限とさへ思はるる位である。言ふ迄もなく此ヌラは、癌から発生する毒液であって普通は無臭であるが、稀には甚だしき有臭のもある。此ヌラが常に胃中に充満しそれが食欲を絶無ならしめるので、止むを得ず此場合患者はサイダー又は番茶の如き飲料を飲み、それを誘引物として、態(ワザ)と嘔吐を促させるのである。それによって数回以上の嘔吐をなし、胃中のヌラが減少するに於て多少の飲食物を摂り得るのであるから、実に悲惨な症状である。此病気を霊的に考察する時、次の如きものである。
それは、此病気に罹る人は龍神の再生であって、龍神時代その特性である多数の生物を呑んだのが原因である。それが龍神の霊体に於ける丁度人間の胃部に相応する局所に呑み込んだだけの生物の霊が、怨恨の想念を懐いたまま滞溜する事になるのであって、それ等の霊の怨念の物質化したものがヌラとなるのである。此理によって、真症胃癌の患者の面貌は、龍といふ感じが非常にするのである。然るに、本医術によって腎臓治療をなし、腎臓の活動が旺盛となるに従ひ、癌毒が漸次軽減し、固結は柔軟となって縮小し、畢に治癒するのである。
擬似癌に於ては、患部の状態が右と同一のやうに観ゆるが、これは単に普通の尿毒の固結であるから、ヌラは全然ないのである。故に、治癒も普通疾患の如く容易である。
(明日の医術 第三篇 昭和十八年十月二十三日)