此病気は、真症の小児麻痺と擬似小児麻痺とあるが、医学ではその区別を知らず混同してゐるのである。
真症小児麻痺は、その原因は霊的であってその殆んどは脳溢血で斃れた死霊が憑依するのである。従而、その症状は脳溢血的症状であって、言語不能、涎を垂らし、半身不随等である。それは今迄学校の成績もよく、何等異常のない健康児が、突然高熱と痙攣を起し右の如き症状となるのであって、実に悲惨にして恐るべき疾患である。そうして何故死霊が憑依するやといふに、脳溢血の如きは、発病するや猝(ニワ)かに霊界人となるので、その霊としては死の覚悟がない故、霊そのものの想念は生きてゐるつもりなのである。然るに肉体がないから、無意識に肉体を求めるのであるが、其場合他人に憑依する事は天則上出来得ないのである。何となれば、人間は家族友人等すべて近親者間には霊線なるものの繋がりがあるからである。勿論夫婦の霊線は最も太く、次に親子・兄弟・親類・友人等、縁の薄くなる程細くなるものである。此理によって、死霊が憑依せんとする場合、霊線を伝はるのである。然るに成人者より小児の方が憑依し易い為小児に憑依する--それが小児麻痺であるから、之等も唯物医学ではどうにも判りようがない訳である。そうして多くは、祖父母が孫に憑る事が多く、親の霊が子に憑る事は稀にはあるが滅多にないのである。すべて霊の憑依も遺伝も一代おきである。一代おきに遺伝するといふ事は、医学でも認めてゐるやうである。殊に癩病はそれが著るしいといふ事である。又人間の性格に於ても、両親に似るよりも祖父母に似る事の方が多いのも周知の事実である。
次に、擬似小児麻痺とは、脳溢血的症状はなく、手とか足とか、身体の一部に故障のある症状である。之等は単なる局部的毒素溜結の為であって、簡単に治癒するものであるが、医家は之等を真の小児麻痺と誤解し、難病扱ひになし、手術やギブス等の療法を行ふが、大抵は反って悪化させて不具者にする事が多いのである。それに就て一例を挙げてみよう。
私が以前扱った患者に、片方の足の裏、拇指辺が着けないで、外側と踵だけ着いて歩くといふ七八歳位の少年があった。それを医師が診て小児麻痺となし、外側の筋が長過ぎ、内側踵の骨が足りないといふので、外側の筋を切り詰め、内側の踵に脛(アシ)の骨を切り取って着け足したのである。それから数年を経ても以前として跛(ビッコ)であるので、私の処へ来たのである。私が診査すると、足の裏拇指辺に毒素溜結があるから、拇指を着くと非常に痛むのである。その為、内側を浮して歩いたので、医師はその発見が出来なかったので、見当違ひの手術をしたのであった。故に私は拇指辺の毒素溜結を溶解除去した所、普通と同様に足が着けるやうになった。然るに、踵を足した骨が邪魔をして、歩行が完全とはいかないから、私は奨めて、右の足し骨を除去し元通りにすべく、右の医師に再手術を依嘱したのでその結果、今度は完全に歩行出来得るやうになって、今日は普通人と異ならないのである。
(明医三昭和十八年十月二十三日)