大戦争と浄化作用

私は前篇に於て、病気も天文現象も浄化作用であるといったが、戦争なるものも、勿論浄化作用である。昔からの歴史の推移に対し心を潜めて観る時、ソロモンの栄華も、希臘の文明も、古都ソドムの崩壊もポンペイの埋没等も勿論その内面的に堆積せる罪穢が極度に達したからである。又、今次の大戦は枢軸国と反枢軸国とが全世界を舞台として雌雄を決せんとする実に人類史上空前の大事変である事は今更いふ迄もないが、斯様な大戦争が起ったといふ事は起るべき理由があって起ったのである。然らば、その理由とは何ぞや一言にしていへば、世界的大浄化作用である。秦西文化が今日の如く発達したといふその内面には、何世紀もの罪穢が堆積し、それが極度に達したからである。彼のアングロサクソンが、亜細亜を初め世界到る処の弱小民族を虐げ、その富を強奪(ゴウダツ)しては、自国のみの利益を計り、絢爛たる文化に酔ってゐた--その罪悪に対し、何時かは清算の時が来なければならなかったのである。即ち、外形的には豪壮華麗なる都市と雖も、霊的には限りなき醜悪の都市であり、崩壊の運命が迫ってゐたのである。倫敦(ロンドン)の破壊もそれの表はれであり、何れは紐育(ニューヨーク)の摩天楼と雖も、跡方もなくなる時が来ないと誰が言ひ得るであらう。従而、彼が東亜から駆逐されてしまふといふ事は、勿論わが皇国の大御稜威と、忠勇なる国民の為である事は言ふ迄もないが、又彼等が犯しつゝあった多年の罪悪の年(ネン)の明きが来たとも言へるであらう。右の結果として、永い間虐げられつゝあった東亜諸民族が、茲に八紘為宇の大御徳の庇護の下に皇道楽土たる日の近づきつゝある事も自然の推移であり、来るべくして来り、成るべくして成るのである。丁度、浄化作用によって毒素溜結が排除し、健全なる姿に還る事であって、人体の病気に対するそれと同様の意味である。

故に、浄化作用とは不正・不合理によって堆積せる汚穢(ヲワイ)が排泄されて、清く正しい本然の姿に還る事である。

又、世界を人体に例へれば、日本は心臓で欧米は肺臓で、亜細亜、濠洲、阿弗利加等は胃に相応するのである。

故に、此意味によって、祓戸の神の世界的大祓が行はれる結果、心臓である日本の国力が強盛となり、それによって肺臓である欧米各国が新生命を注入され、正しく躍動する事となるのである。勿論それは日本固有の道義的文化によって、欧米人を覚醒させ、茲に、自我的悪性でない--共存共栄的、善的文化が発展するのである。又、胃に相応する原料資材の生産地は、大いに開発せられる事になるであらう。人体と同じく、腎臓の活動によって心臓が健全となり、肺臓の活動となり、胃が強健になるといふ事と同様の意味である。又面白い事には、心臓は左肺に包まれてゐる。之は、日独伊同盟の形であり、左肺に比し右肺が大きいのは、米英の意味にとれるのである。従而、大戦争終了後は右肺である国家も心臓及び左肺と共同して、恒久の平和を樹立し、人類永遠の平和を増進せしむるやうになるのは必然であって、茲に世界一丸即ち八紘為宇の大理念の実現となるのである。即ち、人体に例へれば心臓、肺臓、胃の腑が共に健全になり、それによって、全身的機能の活動となり、理想的健康体となることゝ同様である。

(明日の医術 第三篇 昭和十八年十月二十三日)