心臓医術

腎臓に次いで重要なる機能は、何といっても心臓であらう。従而、本療法によって心臓が健全になった場合、疾患及び全身機能、精神的方面等に対し、如何なる好影響を及ぼすかといふ事を説いてみよう。

先づ、腎臓の余剰尿が集溜する局所としては、肩胛骨と脊柱との間が多い事は曩に説いた通りであるが、それは丁度心臓の裏面に当る所である。故に、此毒結が心臓を圧迫してゐる為、心臓の活動が妨げられるのは当然である。そうして心臓の活動の強弱は如何なる影響を与へるかといふに、曩に説いた如く、人体に於て心臓は火であり、肺臓は水であり胃は土であるといふ原理によって、それは次の如きものである。 先づ初め、心臓圧迫の毒素を溶解するに於て、心臓の活動が旺盛となり、其結果として火素の吸収が増加するから、水である肺臓の活動が強化されるのは勿論である。丁度水を温める火力が強くなるやうなものである。従而、肺臓の活動が旺盛になれば、結核患者の肺臓内に固結してゐる毒素は、溶解排泄が速かとなるので、治癒が促進される訳である。又、肺臓の活動は胃の活動を促進するから、食欲は増進するので、両々相俟って非常な効果を挙げる事になるのである。

そればかりではない、ここに見逃す事の出来ない事は、性格的に好変化が表はれて来るのである。元来、心臓なる機能は、熱の本源である関係上、性格的には愛の湧出する機能である。故に、心臓の活動力旺盛は、愛の情動が盛んになる事で、性格が一変する訳である。その例として、肺患者の性格を押並べて愛の熱が淡く、理性の方が勝つといふ事で、私が幾多の肺患者を扱った経験によっても、争ふ事の出来ない事実である。それは心臓が弱い時は愛の熱が不足する。その為、水が温くならないといふ訳である。

此意味に於て、此心臓医術によれば、肺結核の治癒は促進され、罹病者は減少するのであるから、結核問題解決に効果のある事は贅言(ゼイゲン)を要しないのである。否結核問題解決は、之以外にない事を、私は強調するのである。

(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)