二一、小児病 百日咳

百日咳も多い病気であって、強烈な持続的咳嗽によって、白い泡の如きものを嘔吐するので、それが百日咳の毒素であるが、此先天的毒素を全部体外へ排泄するのに百日位かかるので百日咳といふのである。そうして右の如く、強烈な咳嗽及び嘔吐の場合、その苦悶の状、見るに忍びざる程で母親は痛心するのである。又百日咳の特徴は、咳嗽の際息を引く時に、一種の音を発するのである。医療に於ては、咳嗽を止める事に腐心して、毒素の排除を止めて固めようとするが、之は実に誤ってゐるのである。万一医療の目的の如く毒素が固まったとすれば、何れはそれの浄化作用が起る-それが肺炎又は喘息となるのである。小児喘息は右の原因が多いのである。私の治療の時は、十日乃至二十日位で、殆んど全治したので、私は百日咳ではなく、十日咳であるとよく言ったものである。

(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)