一五、痔疾患

日本人特有の病気に痔疾患がある。其病気症状も種々ある事は、世人が知る通りである。其中最も多いのは脱肛であらう。之は、医学でも言ふ通り、日本の便所の構造が悪い為も確かにある。そうして脱肛は、排便方法によって治すのが一番良いのである。それは、便所の時間が長いのが、最大原因であるから、之を先ず短縮する事である。即ち排便が有る無しに関はらず、一回を五分以内とすること。但し、一日何回でも差支へない。此方法を一二年続くるに於て、必ず治癒又は軽快するのである。又今一つの原因は便秘による硬便であるが、之は本治療を施せば容易に治癒するのである。

次に、疣痔(イボジ)は、放任しておいても長時日によれば治癒するが、如何なる重症であっても本治療によれば短時日で全治するのである。又出血、掻痒症等もあるが、之等も放任しておいても、自然治癒するのである。又世人に非常に怖れられてゐるものに痔瘻(ジロウ)があるが、之は決して怖るべき病気ではないのである。最初から放任しておけば長時日膿が排泄されて必ず治癒するのである。然るに、之を知らない世人は、医療によらなければ治癒しないと思ふのであるが、医療は、排膿孔を手術によって閉塞するので、膿は隣接部から穿孔排膿する。それを又閉塞する。復穿孔するといふやうに繰返すに於て、遂には蜂の巣のやうになる。而も、之に薬毒が加はるから激烈な痛苦を伴ひ、頗る悪性になるのであるが、本治療によれば、如何なる痔瘻と雖も完全に全治するので、痔瘻は、私は、治りいい病気と常に言ってゐるのである。そうして世間よく痔瘻を手術すると肺病になり易いと謂はれるが、之はどういふ訳かといふと元来痔瘻の原因は、軽症なるカリヱスの如きものであって、その膿が肛門から排泄する訳であるから、肛門の排泄口を閉鎖すればその膿は肋膜又は肺臓内へ浸潤し、喀痰によって排泄されようとする-それが肺病になるといはれる訳である。

そうして、痔の出血を世人は恐れるのであるが、これは浄化作用による濁血の排泄であるから、反っていいのである。丁度、赤痢の血便と同様な意味であって、後頭部の重い症状や、首肩の凝りが、痔出血によって治癒する事がよくあるのである。

(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)