一六、脚気とバセドー氏病

此脚気も、日本人特有の病気であって、原因は、医学で唱ふる如く白米食である事は言ふ迄もない。故に療法としては、最も簡単なのは七分搗(ヅ)きの米食になし、副食物を成可く多く摂るやうにすれば速かに治癒するのである。又、他の方法としては米糠を食後、茶を飲む時に、普通の匙(サジ)に一杯乃至二杯づつ服めば、大抵は一週間位で全治するのである。其際、米糠は煎る方が香ばしく、飲み易いのである。脚気の麻痺は、私が掌で十分乃至二十分位擦っただけで、大抵は治癒するのであるにみても、最も治り易い病気である。

次に、バセドー氏病は医学でいふ甲状腺部即ち咽喉外部が腫脹するのである。軽症は、軽微な咳嗽、その部の不快感等であり、又気のつかない場合もある。重症は強烈なる咳嗽、喀痰又は白色の粒状や泡状等の液を排泄し、又眼球の飛出す事もある。末期に到ると心臓障碍を起し、脈搏不正、呼吸困難、食欲減退等によって疲労死に到るのである。本医術によれば、順調によく全治するのである。又、妊娠の場合、医家は危険を想ひ、人工流産を行ふが、私の経験によれば危険等はなく、順調に出産するのである。又普通健康体で気附かない程の軽微な甲状腺部腫脹がよくあるが、之等も咳嗽の原因になる事がある。

(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)