一四、癌病

癌に関係した病気の多い事も、周知の事実である。そうして此病気は他の病気と異なりその原因が膿ではなく癌特有の毒素であって而も人体の如何なる部分即ち筋肉でも骨でも臓器にでも遠慮なく移行拡充するといふ、実に恐るべき病気である。医学上無菌とされてゐるのも、膿ではないからである。そうして其病種も多種多様であって、重なるものとしては、胃癌、食道癌、喉頭癌、子宮癌、乳癌、肝臓癌、肺臓癌、腸癌、舌癌等で、稀には、頬癌(キョウガン)、顎癌(ガクガン)、痔癌等もある。近来、医学に於ては癌にも数種ありとされてゐるが、私の研究によれば、種類は医学でいふよりも多いやうである。又、進行性と不進行性とがあり進行性の中にも特に進行速かで、短時日に、胸部、腹部、背部等上半身の大部分に迄、拡充するものもあり、之等は最も悪性である。これに反し不進行性は局部的であるから、治癒は容易である。然し乍ら進行性と雖も、最初は一局部に限定され、末期に到って進行性に移るのも多いのである。

又、医学上、肉腫と名付けられたる病気がある。之は癌に酷似してゐるが、指の触感で癌との差別は判るのである。茲に、注意すべきは擬似癌が少くないので、医学上、癌と診断された患者で、私が診て擬似癌である事が相当あったのである。そうして本治療によれば、癌も肉腫も八十パーセントは完全に治癒し、擬似癌は百パーセント治癒したのである。私が治療の際治らなかったのは、患者が余りに衰弱してゐる為、癌を解消させるまで、生命が保てなかった為であるから、最初からの治療によれば、その咸(コトゴト)くが全治したかも知れないと意(オモ)ふのである。

右の如くであるから、医学が非常に高価なるラヂュウムを海外から輸入するのは国家経済上見逃す事の出来ない無益な浪費であると思ふのである。

(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)