病気と人間の性質

私が幾多の経験上、面白い事には病気と其人の性質とが好く適合してゐる事を感ずるのである。例えば病気治療の場合、よく判るのであるが、素直な性質の人は素直に治ってゆき、淡白な人は病症も淡白である。それに引換え、我の強い人は其如く病気も長引く傾向がある。従而、頑固な人は病勢も頑固である。心の変り易い人は病気も変り易く、皮肉な人は病気も皮肉な経過を辿るのである。

此理に由って考える時、療病に際し、此事をよく知って、其人の悪いと思ふ性質を治してゆく事は、取不直、病気に好影響を与える訳になるのである。それは、何事も素直になる事が最も可いのである。

(新日本医術書 昭和十一年四月十三日)