灸治法

灸治法には、古来からある艾灸(モグサキュウ)と、近来相当行はれてゐる温灸との二種であるが、是等は、薬剤療法よりは確かに効果はあるのであるが、之も体的が主であるから、完全療法ではなく、一時的の場合が多いのである。且つ人間は造化神が造ったものの中でも、最優秀品である。其皮膚の色沢、滑らかな肌、隆起曲線の美しさに見るも、到底、他の動物とは比較にならないのである。特に、婦人の玉の肌と曲線美に到っては、美の極致であるとも言って可い。彼の西洋画家が、裸婦を以て美の極致とするのは、全く其通りである。故に、人間としては神から与へられたる所の皮膚は、弥が上にも美しく丹精を施すのが、神に対する報恩であり、至情でなくてはならない。そうして此美を、一年でも一月でも長く保持すべく、心掛くるのが本当である。 然るに何ぞや、灸の如きものを据(ス)える結果、点々として火傷である醜き痕跡止め、一生涯一種の不具者になると言っても可いのである。斯の如く、神の芸術品に対しての冒涜の罪は、必ずや 何等かの刑罰を受けなければならないのは当然であるから、仮令、治病の効果は相当ありとするも、それ以上の苦悩の因を作るのであるから、到底賛成し難いのである。

(新日本医術書 昭和十一年四月十三日)