便秘症

最も多いものに便秘症があるが、此原因の殆んどは下剤中毒である。というのは下剤を飲む以上便通機能が退化するから繰返す事になり、遂に慢性便秘症になるので、之も自然にしてゐれば必ず治るのである。

此症は、病気ではないが、相当苦痛のものである。最初の原因としては、故意の節食及び水分を摂るのが少量過ぎる為である。したがって、其原因に気が付き、改めれば容易に治癒するのであるが、殆んどの人は、其際、薬剤に依って目的を達しやうとするが、それが実は、執拗なる慢性便秘の原因となるのである。前にも述べた通り、排便器能は薬剤の力の援助に依って漸次退化するので、退化するから薬剤の力を借りる、それが復退化させるといふ訳で、終に薬剤の力を借りなければ排便が無くなる結果になるのである。故に便秘症を徹底的に治すには、どうしても薬剤力を絶対借りないで、自然に排便させるべくするより外に方法は無いのである。

処が医師は便秘を恐れるが、之は全然誤りで、私の経験によるも放ってをいて一ケ月目位から出るやうになり、何の障りもなかった人もあり、半年なかった人もあったが、何の事もなかったにみても、便秘は何でもないのである。以前私が治した患者で、下剤を廃止した所、八日目、其次が十日目、七日目、五日目、三日目といふ風になって、終に完全に毎日自然排便がある様になったのである。それは胃癌の患者でしたが、今日は全治してピンピンして居る。そうして、最初の二十八日間排便が無かった時、別段不快感もなく、病的症状も無かったのであるから、便秘の為の害は実験上些かもなかった訳である。

此反対の慢性下痢の人もあるが、之も毒の排泄であるから結構で、出るだけ出れば治ると共に健康は増すのである。以前約三年私の言う通りに放っておいた処、全治して非常に健康になった人もあった。

私の経験によれば、米糠を煎って食事毎に普通の匙に一、二杯位、重症で三杯位呑むと大いに効果がある。之は絶対無害で、多く呑むほど効果はあるが、定量を越すと腹痛することがあるから其点加減する必要がある。

便秘症(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
眼、耳、鼻、口(医学革命の書 昭和二十八年)