便秘症

此症は、病気ではないが、相当苦痛のものであります。最初の原因としては、故意の節食及び水分を摂るのが少量過ぎる為であります。したがって、其原因に気が付き、改めれば容易に治癒するのでありますが、殆んどの人は、其際、薬剤に依って目的を達しやうとしますが、それが実は、執拗なる慢性便秘の原因となるのであります。前にも述べた通り、排便器能は薬剤の力の援助に依って漸次退化するので、退化するから薬剤の力を借りる、それが復退化させるといふ訳で、終に薬剤の力を借りなければ排便が無くなる結果になるのであります。故に便秘症を徹底的に治すには、どうしても薬剤力を絶対借りないで、自然に排便させるべくするより外に方法は無いのであります。

以前私が治した患者で、下剤を廃止した所、八日目、其次が十日目、七日目、五日目、三日目といふ風になって、終に完全に毎日自然排便がある様になったのであります。それは胃癌の患者でしたが、今日は全治してピンピンして居るのであります。そうして、最初の二十八日間排便が無かった時、別段不快感もなく、病的症状も無かったのであるから、便秘の為の害は実験上些かもなかった訳であります。

私の経験によれば、米糠を煎って食事毎に普通の匙に一、二杯位、重症で三杯位呑むと大いに効果があります。之は絶対無害で、多く呑むほど効果はありますが、定量を越すと腹痛することがあるから其点加減する必要があります。

便秘症(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)