此病気は、身体の全部又は一部に発疹し、多くは紅潮を呈し、又、非常に痒い。よく腸が原因と謂はれているが、之は誤りである。其証拠には、如何に腸を治療するも、其効果は無いに見ても明かである。
私の研究によれば二種の原因がある。一は、麻疹の毒素が残存してをり、それが浄化作用に依って発疹する。然毒が陰性化されたる為、変形的天然痘となって、一種の蕁麻疹的症状を表はすのである。又、食物の中毒による事もある。之は一日乃至三日位にて必ず治癒するのである。二はカルシウム注射の中毒に由るのである。実験上、カルシウム注射をして、早きは一、二年後には例外なく発疹するので、近来非常に多い。したがって、此患者にはカルシウムの注射の有無を訊く事を忘れてはならないのである。医療は療法としてカルシウム剤注射を行ふが、之で一時鎮静しても、再発するのである。その場合後の治療の為の注射が加はるから、初発よりも増悪するは勿論である。
本療法によれば、どちらも容易に治癒するので、普通一週間位、重症で二、三週間位と思へばいいのである。其他種々の皮膚病がありますが、大抵は一、二週間で全治する。
蕁麻疹(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
蕁麻疹(医学試稿 昭和十四年)