痔の病の中一番問題なのは痔瘻であらう。之は強烈な薬毒が浄化作用によって肛門の一部へ穿孔し、そこから排泄されるのである。したがって、自然療法によって治癒すべきであるが、医療は手術によって肛門際の滞溜せる毒素を除去し穿孔を閉鎖するに於て一時は治癒したと思うが、時日を経て、元来身体内部に在る毒素であるから再び肛門に集溜するのである。然し、其場合手術によって閉鎖されたる最初の穿孔部を避けて、再び穿孔するものである。其際患者は、第一回の手術の効果なきを知って二回目の手術を厭ひ、薬物塗布等の療法をするのである。故に薬毒が粘膜を靡爛せしめ、人により穿孔が数個所になり、靡爛と共に、薬毒の刺戟によって痛苦甚しく、患部は二目に視られぬ状態を呈するのである。遂に蜂の巣のやうになって了ひ、耐へきれない程の痛みとなる。之は手術の度に新しい薬が滲透するからで、つまり痛みの原料を増やすのだから堪らない。
従って最初から何にもせず放っておけば、自然に排膿して、必ず治るものである。無痛と有痛とあるが、有痛の方が悪性で非常な激痛のもある。また、悪性は糜爛して瘻穴の所在さへ判らぬ位である。原因の一つに、脊髄カリエスの膿が下降して、肛門から排泄されるのである。また、痔瘻を治すと肺病になり易いとよく云はれるが、之は手術が奏効して、排膿が止まると毒素の出所がなくなるので、肺を目掛けて出ようとするからである。
また、駆梅療法の一種で昔から推奨されてゐるものに、水銀を臀部へ注射する方法があるが、之は数十年経ってから痔瘻と同様の症状を呈する事がある。非常に固い隋円形の尖起状のものが出来、耐へられない程の激痛がある。之も放っておけば二、三週間で全治するが、手術をすると慢性痔瘻になり易いのである。
本療法によれば確実順調に全治するものであって、軽症は一、二週間、重症は二、三ケ月とみればいいのであります。
〔浄霊箇所〕
肛門患部、鼠径部、背面腎臓部
(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
(医学試稿 昭和十四年)
(文明の創造 昭和二十七年)