胃下垂

胃下垂であるが、之も医療で作る事がよく分る。即ち消化のいいものを食ひ、消化薬を飲めば胃の活動の余地がないから、胃は弱って睡眠状態となり、弛緩するのは当然である。従って此病気を治すのは訳はない。薬を全廃して普通食を普通の食べ方にすれば自然に治るのである。之に就いても注意すべきは、よく噛むのを可いとしてゐる事で、之が大変な誤りであって、よく噛む程胃は弱るに決ってゐるから、半噛み位が最も可いのである。

原因は胃部より腸部へかけて然毒、又は尿毒が溜結するので、それに圧迫され胃袋が長くなるのである。そうして、消化薬を服みつつ柔い物ばかり食ふから胃が弱る。それで緊張が無くなるから弛緩し、下垂するのでありますから、「人為的製造病」であります。

然し、胃下垂と言って来る患者で、事実下垂のものは十人に一人位であります。それは、実は、水膿溜結の大きいのが胃から腸の部分にあるので、それが下垂のやうに見えるのであります。此症は、本療法で溶解すれば、一、二週間位で簡単に治るのであります。又真の胃下垂は、食事の改善、即ち普通米飯食になし、薬剤を服まなければ短時日に治るのであります。

胃下垂(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
胃下垂(医学試稿 昭和十四年)