胃痛で、此酷いのが胃痙攣である。之は激しい痛みで堪へられない程である。医療はモヒ性薬剤を用ひるが、之は一時的麻痺によって、苦痛を抑へるだけであるから、日ならずして又発る。という訳で癖になり易いもので、此病の原因も勿論薬毒であるが、其経路をかいてみよう。
先づ、薬を服むと一旦胃に入るや、薬は処理されないので、胃に停滞する。人間は仰臥するから薬は胃を滲透して下降し背部に固まる。それが浄化によって溶け胃に還元するが、其時は最早毒素に変化してゐるから、胃はそれを外部へ排泄しやうとする。
其刺戟が激痛であるから、胃痙攣の起った場合、何にもしないで一度我慢して、痛いのを通り越して了えば下痢となって毒素は出て了ふので根本的に治るが、毒素が出切る迄には何回も発るが、之は致し方ない。然し其次発った時は、必ず前より軽く済み、次は又軽くなり遂に全治するのである。
また、胃の方が不消化物又は大食をして膨脹する時、胃と毒素が胃の裏に滞留したものとが押合って痛むので、その痛みのひどい場合に痙攣を起すのでありますから、その固結を溶解すれば全治するので、割合容易であります。
また、慢性胃痛は一旦吸収された薬が毒化して還元し、胃壁を刺戟するからであり、胸焼は胃の附近にある毒素に対する浄化作用の微熱である。
(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)