序文

抑々、凡ゆる文化の向上は、破壊と建設を繰返しつつ進歩し、発展しつつ今日に到った事は何人も知る所である。破壊と建設にも大中小千差万別ある事も亦事実である。

吾等が常に唱える地上天国の建設とは最も大いなる創造であって、空前の偉業であるといえよう。然し乍ら、地上天国といふ夢の世界を建設するに当っては、現在迄に営々築き上げられた基礎工事なるものも一応点検の必要ある事は勿論である。とすれば基礎工事とは何かという事であるが、それはいふ迄もなく現存する基仏の二大宗教である事は、誰しも異論はあるまい。

といっても、此二大宗教を審(ツマビ)らかに解説する事は、あまりに多岐多量で、それを実現した処で読者の頭脳を疲労させるのみで、必ずしも必要ではないであらう。此意味に於て出来るだけ要約し、只概念を得る程度に記述したのが本著であって、その意を諒とし読まれたい事である。

基仏の二大宗教を通じて本教を観る時、本教と時代との重要意味も判ると共に、真のその価値を見出し得るであらう。

(自観叢書七 昭和二十四年十月二十五日)