之からかこうとする論文は、全世界の学者といふ学者は、夢想だもしなかった事であって、恐らく直ちに信ずる事は出来まいが、静かに考えてみれば、暗夜に光明を得た如く豁然と眼界が開けるのであらう。というは現在全世界を圧倒的に支配して了った科学文明は、近き将来旧時代の遺物となる時の来らんとしてゐる徴候は、私にはよく判るからである。
というと余りの意想外な説に私の頭脳を疑うかも知れないが、それが真理である以上、卓越せる学者なら首肯出来ない筈はないのである。ではそれはどういう訳かというと、次に根本からかいてみるが、現在迄の科学は言う迄もなく唯物観念が基本となってをり、唯心観念は全然閑却されてゐるのである。
之に就いては先づ万有の実体を奥深く検討してみれば分るが、事実物質のみでは解決つかないものが数知れずあるのは誰も知るであらう。というのは唯物理念のみで解決しやうとするからで、其処に原因があるのであるから、どうしても唯心観念が基本とならなければ真の解決は不可能である。唯心観念とは言う迄もなく有神思想であり、茲に信仰の重要性があるので、若し科学のみで一切が解決出来るものなら、現在の如き矛盾撞着、混迷に喘ぐ社会が出来る筈はないので、茲に科学至上主義の欠陥が暴露されてゐるのである。
というやうに人類はどうしても信仰が必要である。というのは彼のスターリンが最初の頃、共産主義の敵として信仰を潰滅しやうとし、各地の教会を閉鎖し安心するや、国民は秘かに教会に蝟集(イシュウ)するので、色々な手段を以て弾圧したが到底効果ないので、流石のスターリンも匙を抛げ、再び信仰を許したという事である。
その他米国を始め欧羅巴各国、亜細亜の凡ゆる国にしても、信仰なき国は現在ソ連を除いたら殆んどないのが事実である。としたら政府や学者が如何に科学思想を鼓吹し、宗教は迷信なりと大声を挙げても、駄目なのは分り切った話である。以上によってみても分る如く、現在の世界は唯心思想と唯物思想とが離れ離れになってゐる事であって、之が文明の一大欠陥である。
之を譬えてみればよく分る。科学は肉体派であり、宗教は精神派であるから、現在はバラバラになってゐる訳で、之では平和幸福など得られる訳はない。例えば人間にしてもそうで、精神は斯うすればいいと思っても、肉体が言う事をきかなければ必ず間違った行ひをする、といって肉体の方で精神を自由にする事は無論出来ない、というジレンマに陥ると同様、凡てが巧くゆく筈がない。どうしても霊肉一致でなくては幸福は得られないのである。
之と同様世界も霊肉バラバラになってゐるから、今日の如き混迷状態であり、人類は苦しみの坩堝に蠢いてゐるのである。という訳は全く科学に捉はれ、精神面を無視してゐたからに外ならないのである。此バラバラである霊体を一致させた文明こそ真の文明である。
とは言うものの之が大問題である。というのは如何にして此科学過信思想を目醒めさせるかという事であるが、その方法こそ科学で不可能である事を、可能なる事実を示す事である。即ち科学以上の超科学であって、それには偉大なる力を要する。
勿論既成宗教の教祖、聖者、偉人位の力では到底及ばない処か、空前の絶対力即ち神力である。私はその力を神から与へられたのであるから、此力を自由に駆使して科学以上の科学、宗教以上の宗教即ちX的力であり、之によって新文明を創造するので、之が地上天国の樹立である。