舌に代えて

私はメシヤ教々主岡田茂吉であります。実は皆さんに直接お話したいのでありますが、そういう訳に参らないので、残念乍ら原稿にして読ませますから、其御心算で聴いて貰ひたいのであります。

抑々メシヤ教は、名前は宗教ではあるが、本当から言へば全面的に宗教ではないのでありまして、つまり宗教はメシヤ教の一部といってもいいのであります。

従って、本教は全人類の救ひの事業であって、本教の建前は病貧争絶無の世界を造る、言はば世の中から病気を無くし、貧乏を無くし、争ひを無くすといふ馬鹿巨かい目標を掲げてゐるのであります。恐らく世界肇って以来、斯んな大きな看板も事業もなかったでありませう。ですから、言葉だけでは実現性のない夢としか思えないでありませうが、事実は日に月に進展しつつあるのであります。

右の通り病気と貧乏が無くなれば、自然争ひもなくなる訳であるから、本教に於ては病気と貧乏を無くす事に最も骨折ってゐるのであります。といふ訳で、現在本教によって、御医者から見離された重難病が実によく治る。

何よりも、本教が宗教法人として天下に名乗を挙げたのが昭和廿二年八月でありますから、まだ僅々四年数ケ月で現在見るが如く、全国到る処に分所支部が出来、信徒も数十万に上り、益々増へつつある現況であるので、此様な発展振りは恐らく昔から類例がないでありませう。

次に貧乏でありますが、之にも勿論色々な原因もある。何といっても病気と、次は食糧の不足でありませう。処が御承知の如く、我国は現在八千四百万の人口に対し、今年などは六千万石しか穫れず、二千万石以上も不足するので、外国からの輸入によって辛くも安定を得てゐるにすぎないので、其金額に至っては今年なども一千数百億に上るのでありますから、国家経済上由々しき大問題であります。

之を何とかしなければ、日本は何時迄経っても貧乏神と縁切りにはなりますまい。御存知の如く、敗戦によって国土は狭くなり、逆に人口は殖へるばかりなので、前途は悲観の外ないのであります。では何故米がそんなに穫れないかといふと、之には実に想像もつかない処に原因があるのであります。

といふのは皆さん、驚いてはいけません。其原因とは、農業の生命としてゐる人肥、金肥、即ち人為肥料を施す為なので、つまり此肥料によって土を殺して了ふのであります。元来土は肥料の塊りといってもいい位のものであるから、土を生かさなければいけないので、それには堆肥だけで他の不純物は一切やらないやうにする。そうすれば土自体の力が十分発揮されるので、自然栽培を五ケ年続ければ、驚く勿れ五割増産は確実であります。

とすれば、六千万石の五割増は九千万石であり、日本人が鱈腹(タラフク)食っても尚余る位であるから、あべこべに輸出先を心配するやうになるでせう。斯うなれば農民諸君は福々で、購買力も増へるから中小商工業者も潤ひ、不景気風など吹ッ飛んで了ふでありませう。而も自然栽培は虫害はなく、風水害も激減し、肥料代も要らず労力も半減するので、天国は先づ農村からといふ事になるでありませう。

之に就て近日、本教発行の栄光新聞農業特輯号が出ますから是非読んで貰ひたいと思ひます。之には本農法の原理や農林技官金崎貞男氏の専門的見地からの実験報告もあり、又全国各農村からの実績報告も満載されてをります。

以上は大体本教の輪廓を述べたのでありますが、以上の事を初めて聴かれた方は、余りの意外に何が何だか分らないでありませうから、先づ本教の実体に触れてみる事で、之こそ幸福の門に一歩踏み入ったのであります。

(昭和二十六年)