宗教篇 癌病

癌の病として、最も多く而も難症であるのは、何と言っても胃癌であらう。曩には薬毒による擬似胃癌を詳説したから、之から真症胃癌の原因である憑霊の事をかくのであるが、此霊は殆んど蛇の霊である。蛇が其人の前生の時か又は祖霊に殺された為に、其怨霊が恨みを返へさんが為憑って苦しめるのであって、此症状は主に腹部全体に亘り、形は小さいが蛇の如く、或時は丸く、或時はクネり長くなり、恰度泳ぐやうに移動するのである。其際激痛、不快感、食欲不振等もあり、注意すれば其位置も判るのである。何しろ霊であるから、切開しても診断の時は確かにあった筈のものが、見付からないのは、見えざる蛇霊であるから移動しても分らないからである。元来蛇なるものの性格は、非常に執着が強いもので、右の如く今世までも追及し、復讐するのである。

然し此癌は割合治り易いものであるが、同じ蛇霊でも非常に悪性なのがある。之こそ最初人間が前々生に於ける執着の罪によって、畜生界に墜ち、蛇となって再生するのである。処が其蛇が生きてる間に、多くの種々の生物を呑む為、其生物の怨霊が凝って蛇の腹中に宿った儘、今度は人間に再生するのである。従而、其生物の集団怨霊が、復讐的に苦しめやうとする。其苦しみが人間に移写するのであるから、実に厄介なものである。そうして此症状は中年期迄は余り発生しないが、其頃から以後になると、猛威を呈し始める。最初は食欲不振、痛み、不快感等であるが、進むに従って、触れれば判る程の固結が一個乃至数個出来、嘔吐もするやうになる。一層進むと胃中にヌラが発生し、漸次増へてゆき、遂には胃の中全部にヌラが充満する。そうなると全然食欲がなくなるから仕方なしに指を突込み、無理に吐くやうにすると若干吐いてヌラの減っただけ、胃に空虚が出来るから、流動食が入るのである。そんな訳で漸次食事不能となって、衰弱死に至るのである。此ヌラといふのは右の怨霊の物質化であるから、ヌラの多いのは多く呑んだ訳である。之にみてもヌラを吐く症状は、真症胃癌と思えば間違ひない。然し稀には胃癌でなくて、ヌラを吐く場合もあるが、此ヌラは頗る稀薄であるから、よく分る。先づ濃いヌラを吐く症状が真症胃癌と思えば間違ひないのである。

次は直腸癌であるが、之は直腸部に癌が発生し移動性ではなく、固定的である。直腸は糞便通過の管であるから、便の通過が妨げられるので、医療は手術によって癌を切り除るので、糞便の通り道がなくなるから、腹部の横の方に、人工肛門を造るが、之程始末の悪いものはない。何しろ開けっ放しであるから、糞便が溜るだけは、其穴へ絶へず出て来るので、赤子のやうに始終オシメを当てねばならず、動作によっては腸がハミ出る危険があるので、其辛さは並大抵ではない。大体の人は死んだ方がましだと歎声を漏らすが、稀にはどうやら泣き泣き相当生きてる人もある。此原因は前生時代、人の罪穢の浄化を妨げる行為、つまり罪人から賄賂を取って許したり軽くしたりする行為の罪や、欲の為人に醜行を行はしたり、見逃したりした罪等である。

次に割合多いものに子宮癌があるが、此原因は、前生期又は今生期に於ける堕胎の罪であって、つまり闇から闇に流された水児の怨霊が子宮へ憑依するのである。稀には膣癌といふのがあるが、之は不道徳な男女関係による罪である。

次は喉頭癌であるが、之は前生期又は今生期に於て鳥屋などが、沢山の鶏の首を締め殺した怨霊が殆んどである。又舌癌は前生時代舌によって作った罪であって、舌の為に人に迷惑や苦しみを与へた恨みの怨霊の罪であるが、此外に一寸気が付かない罪がある。それは誤った学説や、悪思想や、邪教の宣伝などで、多くの人を誤らせ、社会に害毒を流すやうな罪で、之は多数の人に被害を与へるから、割合重い罪となるのである。

次に頬癌、痔癌等もあるが、之等は滅多にない病気で、頬癌は人の頬を殴打し、損傷を与へた怨みの罪、痔癌は肛門に損傷を与へた怨みの罪等である。

(文明の創造 昭和二十七年)