昭和も愈々十一年干支(カンシ)の初めの子年といふ、十は結んだ神の型、待った (マンジ)(ギャクマンジ)の旗印、経緯結んだ十年に、オギァと生れた観音会、赤ン坊なら一年を経った今年の元旦が誕生祝ひといふ所、愈々十の仕組をば、始める元の一の数、十一年の今年から、ヨチヨチ坊やは歩き出す。十二支の方も動き出す。一体鼠といふ奴は大黒様の御使とやら洵に芽出度い福の神じゃない福の役、形は小さいがチュウチュウと、忠義は誰にも劣らない。宝をポツポツ曳いて来る、可愛い奴で御座るわい。
などと煽(オダ)てて鼠めに、馬力を掛けて働かせシコタマ運動費を取込むといふ、正月早々からの大計略などと言ったら尻メドの、小さい奴は観音様は、案外欲張りな仏様だと、思ふであらふが左にあらず漸く日本も長年の汗水垂らした甲斐あって、対外躍進素晴らしい発展振りを見るにつけ、子年の今年あたりから、現生ドシドシ流れ込み、お互ひ様の懐も、ウント暖まらうといふ寸法、赤字が消えりゃおアシの無い、達磨もニョッキリ足が生え、ニコニコ踊り出すじゃらふ。
一体全体いつ見ても、ニコニコされてる大黒様は、どんなお方かと言ふ丈け野暮じゃ、此お方こそ観音様の、御家来衆の其中で、金銀財宝の集め役貧乏退治の親方で其御本体は多聞天、と申す勇猛仏そんな穿鑿はどうでもよい、無病息災福々で、年が年中ニコニコと大黒さんの顔のやう、世界一列なったなら、七福神も踊り出し閻魔も笑ひ出すじゃらう、之が本当の極楽で、娑婆即寂光浄土国、観音会の大看板-
大光明世界で御座る。
(東方の光九号 昭和十一年一月一日)