阿呆文学 生命ちゅもの

此間の新聞広告欄の、谷口雅春氏の著書の見出しに、生命の奔流や、いのちのはやて、などとあるので、はて、変(ヘン)じゃわいと、阿呆考えてみたので御座る。で、此人に寄れば生命ちゅうものは、河へ流れ出したり、風になって、ふっ飛んで了ふのであるから、実に危いでは御座らぬか?

何と諸君、河岸(カワブチ)や、風の吹く日は、しっかり生命ちゅうものを、押えて流れたり飛んだりせぬ様にする事じゃて。

(東方の光七号 昭和十年八月十六日)