投書密告による被害

当局が犯罪の手掛りとして投書密告を歓迎するのはよく判るが、真面目な意味の投書なら、吾等と雖も賛意を表するに吝かではないが、然し悪意や策謀による虚構、捏造的のそれは大いに警戒の要があろう。それによって自己の満足を得ようとするのは、実に悪魔的行為である。

此点本教などは常に被害者である。特に昨秋の脱税問題以来一躍世間に知れ渡ると共に巨額な税金を課せられたのであるから、本教に向って金銭を狙う輩が急に激増し、それ以来うるさい程種々の問題を担ぎ込んでくる。それ等を一々検討する時、悉くが何とかして金を得ようとするのである。所謂巧妙なユスリである。

そうして大規模なものになると、其手段たるや実に巧妙を極め、その創作的謀略には寧ろ感嘆の外ない位である。而もそれに躍る人物中には知名の士は勿論、数名の国会議員さえも混り、大新聞をも動かすのであるから驚くべきで、相当の運動費さへ使ひ日夜狂奔してゐるといふのであるから、普通人には到底想像もつかないであらう。

此様な訳で、彼等が当局を動かさんとする場合、常套手段としては投書と密告である。面白い事には投書密告の事前、数百枚に及ぶ原稿を売りに来る事もある。その売価数十万円などと吹っかける。処が其場合その原稿を一度買ふと、それがユスリ仲間に知れ亘り、次々売込にくる。之を知った吾等は断乎拒絶する方針にしたが、すると彼等はしっぺい返しも手伝って、今度は大仕掛に、各別々の当路者に投書密告をする。

その意味は当局者が最も眼を光らしそうな事を並べ立てるので当局もそのまま信じないのは勿論であるが、一応の疑惑をもち調査の手を進める事になる。そうしておいて彼等は意外な方面から、当局の弾圧近きにありと脅し、運動費をカスメようとする。全く彼等の深刻な謀略には呆れざるを得ないのである。

それが為当局に手数をかけ、吾等にも迷惑をかけるのであるから、実に悪魔的行為でしかない。前述の如く彼等仲間には広範囲な連絡があり衆団的行動である故に脛に疵もつ連中が彼等に睨まれるとすると、相当多額をユスらるる事は想像され得るが、然し吾等に於ては苟(イヤシ)くも宗教者であり、社会に善を勧める役目である以上一点の疚(ヤマ)しい事は出来る道理がないから、彼等が如何に策謀しても応じないのは当然である。何となれば新宗教として折角異例の発展をみ、数十万の信徒から絶対の信頼を受けている以上、些かの瑕(カ)きんがあっても教団全般に及ぼす影響は蓋し甚大なものがあるからである。

以上の如くであるから、投書密告の真偽を決定する場合、その判別に当っては鋭敏なる眼と慎重な態度を以て善処されたい事を要望して歇まないものである。

(光新聞三十五号 昭和二十四年十一月十二日)