「読売」の反省を求む 事実無根の教団誹謗記事

去る七月廿二日付読売新聞静岡版A版に左の如き記事が掲載された。
狂信の果に自殺
お光様に迷った人妻
新興宗教「お光様」こと大日本観音教が人妻を殺した!とさわがれている。
去る五月十六日夜浜松市植松町地先東海道線できみ(二つ)ちゃんを抱いて飛込み自殺をとげた浜名郡芳川村都盛会社員伊藤一夫(三一)氏妻夏枝(二八)さんの自殺原因については当時単なる精神異常からと葬り去られていたが初盆も過ぎたこの程、別項の様な遺書が発見され、原因は意外にも最近芳川村を始め近郷の部落に深くくい込んで来たお光様の為と判り、家族を憤激させている。

戦後の荒廃した人心を巧みに掴えて繁栄した新興宗教中、熱海に本部をおくお光様はインスピレーションで病気をたちどころに治すと宣伝、多数の信者を集めているが夏枝さんが初めてお光様の信者になったのは去る二月のこと。

きみちゃんを昨年十月産み落してから産後の肥だちが良くなく医者通ひをして居ると、お光様の布教師が三度、四度と根気よく信仰を勧めに来たのが初まりで、永い病気で薬などは勝目がない、布教師の言葉をジーッと聞いて居ると有難いお言葉が満ちあふれて居ると妹あき子さんや主人一夫氏の引止めの言葉も聞かずお光様にすがることに決め、インスピレーションをキャッチすると称する腹に巻くお札を二千円で買ひ求めることゝなったが、布教師に金を渡したがお札はいつまでたってもよこさず、それのみか「一家全部の者が信者にならなければ効きめはない、主人と一緒に磐田市の分教場へ行って信者の手続きをした上でお札を受けなければだめだ」と言はれて五月十七日主人と共に磐田へ行くと布教師と約束した。しかし最初からお光さまの信仰を反対して居る主人が一緒に行ってくれる筈もなし、自分と共に信者になるのは尚更望めない事……

しかし約束したからにはお光さまを裏切ることも出来ずと思ひあぐんだ末磐田行の前夜、列車に飛込んだもので、邪教であるか否かはさておき信者は医者にみてもらってはいけない。神の力仏の霊感で病を治すのだと非現実的な教是によって組立てられたお光さまを固く信じた者の当然の結果といふにはあまりにも悲惨な実例である。
これについて妹あき子さんは語る。

布教師は兄(一夫氏)が留守の時を見て姉を訪れ、指の先から霊光が出てそれを当てると身体が熱くなるとか思わずふき出したくなる様な馬鹿げた事を真面目に言って居ました。この村にも信者が多くあるそうですが共産党の細胞の様に表面には出て居ないので確かな数はわからないが私が知ったものだけで七人居ますが皆無智な人達ばかりです。姉は物事をいちづに考え込むたちでしたからあんな事になったのでせうが、お光様が姉を殺したと同じ事でうらんで居ます。

「遺書」父母様、長い間心配ばかり掛けて何一つ報ゆる事とてなく旅立つ罪をおゆるし下さい。私達は喜んで天国へ行きます。細かい事を書けば果てしがありません。お母様は気が弱いから私の死を聞いてどんなにおなげきするかわかりませんが、皆様の幸福を考えますとやっぱり死んだ方がお互の仕合せです。私亡き後は皆様御相談の上、観音教へ仏へ転向出来れば幸です。八百人の人を救う為喜んであの世へ行きます。(原文のまま)この他に主人一夫氏と遺児二人宛の二通が発見されて居る。

右の記事に対し、当教団に於ては即刻充分の調査を遂げたる処、大部分は事実に相違するを以て読売新聞社に対し該記事の取消方を申し込んだが、若しこれに応じない場合は其筋へ告訴を提起する。

由来、日本の新聞紙は他人に迷惑を及ぼす如き記事を、相手の名誉や信用を傷つける事を知りながら、充分の調査もせず、軽率に掲載する悪弊のある事は誰も知っている処で、それ等は何故かというと日本人の大部分はそれ等に対し泣寝入りに済ますという癖があるからで彼等は之を奇貨として相も変らず杜撰(ズサン)極まる記事を平気で掲載するという行為は許すべからざる社会悪である。

以上の如き行為は勿論、凡ゆる社会悪を是正し、社会を浄化すべき新聞紙の使命を忘れたる行為である。此点を考慮した総司令部が占領政策の初めに当って警告を与えた事も、時の経過と共に等閑視するようになった為かは知らないが、相変らず旧態依然として悪徳新聞流の行り方を社会から大新聞と目されている読売紙の如きが行うという事は大新聞であるだけその被害も大である事は勿論である。

是を是とし非を非とし、凡ゆる社会問題に対し、常に厳正公平の批判の下に、社会改善の一助たるべく、小新聞なりとも我光新聞は常に努力しつゝある事は何人も認め得るであろう。

故に相手の如何を問わず、特権を利用し悪徳行為に出でたる者に対しては断乎たる正論を以て覚醒すべく、それがわが教団の方針である。のみならず宗教本来の存在理由である事も、吾等は確信するのである。

(光新聞二十二号 昭和二十四年八月十三日)