ユスリ物語

由来、宗教団体に対し強請の多い事は予て聞いて居た処ではあるが、本教が税問題で社会に喧伝されるや、何処からともなく金貰ひ強請等が続々来た事は実に驚くべきものがあった。何しろ某大新聞などには本教の資産二、三十億と出ていたので之を狙って有象無象や見ず識らずの者までが多く手紙紹介状等を利用して毎日引きも切らない有様、事業資金が足りないとか、有利事業だから投資しないかとか、仏像を買って貰いたいとか、甚だしいのは子供の死際に浄霊を頼んだばかりの縁で、死後慰藉料何万円を寄越せとかいって来た者もあり、一時はその返答や応接に忙殺されたものである。茲でチョッピリ強請の内幕を暴露してみよう。

ユスリという商売もなかなか智慧が要るようだ。中には随分深謀遠慮な画策をするものさえあるが、之等を見る時、これ程の智慧を正しい事に働かしたならどんなに成功するかと思って、実に惜しい気がした事が度々あった。然し彼等は人を騙して金銭を得る事に深い興味を感ずるらしい。

同じユスリといっても軟派と硬派があるから面白い。先づ軟派から話してみるが、之は洵に柔かく、さも教団に忠実なる如く見せかける。そうしてその言う事は「或団体が教団を危殆(キタイ)に陥れようと画策している」とか「信者を撹乱している」とか、種々巧妙な脚本を作って運動費を要求する。そうして此連中は実に弁舌巧みで、うっかりすると一杯食はされるのである。

然し最も多いのは左の如き型である。之は徹頭徹尾脅迫型で彼等が用いる常套手段としては「司令部や法務庁が弾圧すべく準備中」だとか甚しいのは「大先生を引張って家宅捜索をし教団をブッ潰す」とか「教団の各支部に渉って一斉検挙をする」とか、最近の如きは国会議員まで利用している者もあり、共産党を利用する者もある。又彼等のよく用いる手は、大袈裟な脅かしを並べておいて、扨て之を未然に防ぐには運動費何万円が要るなどというのや、あの手この手のイヤがらせをする奴もあり、何々会の会長とかいう聞いた事もない会名を三つも四つもデカデカと並べた名刺を出して援助を乞うもの、聞いた事もない新聞や雑誌記者と名乗る者、滑稽なのは面会するやワザとドラ声を出してイヤがらせたり執拗に粘って幾何かせしめようとする。彼等の特徴としては話が非常に巧妙である事と、今一つは紙一重という処まで注意して法規に触れないようにする。

又稀には立会演説を申込んだり、前以て彼等の画策を情報的に知らせる手もある。然し感心する事は彼等の創作技術であって捏造はお手のものであるから官庁の役人や重要方面などに疑惑を起させる事は妙を得てをりそれが為、本教の夢にも思はない事柄を訊ねられる事も往々あって唖然とする事がよくある。随而当局や言論機関、社会一般が疑惑を起す原因のネタはユスリから出てゐる場合が非常に多いのであるから彼ユスリ君を偉なりと言ふべきである。

次に斯ういふ苦肉の手を用ひる。それは投書を数十通作成し、勿論一人づゝ名前を変え各所から投函するので、当局も輿論と誤解し本教に向って取調べを行ふ事さえあるから驚くべきである。故に当局に於ても彼等の手に乗らぬやう細心の注意を要望するのである。尤も投書によって犯罪剔出の手懸りとなる事実もあるから投書も馬鹿にはならないが、といって投書の為に良民があらぬ疑を受け迷惑を蒙る場合もある以上、取捨選択に充分戒意されたいのである。

事苟くも社会改善を目標とする宗教に不善などありよう筈がないからである。そうして感心する事は、相当有力な新聞社の記者は、金銭饗応などには決して目もくれない事でも、流石と思ふのである。

(光新聞十九号 昭和二十四年七月二十三日)