巻頭言

つい先頃まで世界の二大勢力の確執が、戦争によらなければ解決出来ないように思はれ、何時勃発するか判らない危機的様相に人類は脅かされてゐた。処が突如として危機を脱するまでにはゆかないとしても、少くとも余程緩和された事実が発生した、というのはスターリン氏が打った平和攻勢の一石である。即ち共産主義との両立はあり得ない事はないという所論であって、実に意外といはうか、何としても耳新しい発表である。

それまで我人共に信じてゐた事は、共産主義の最後の目標が、世界制覇に在るという心配で之は殆んど常識化されてゐた。故に前記の如き大転換は夢にも想はなかった事である。してみればス氏が何故右のような思ひ切った説を唱え出したかという事であるが、これは考えるまでもない。全く原爆が進歩し水素爆弾にまで及んだ今日、流石のヒ氏もその被害を想う時、戦争の勝敗処ではない。人類全滅の悲劇さえ想像されるからである。とすれば世界制覇の夢処か、せめて今日までに獲得した鉄のカーテン内だけでも固めなければならないという方針に変ったのであらう。従って原子爆弾が戦争防止という人類に与えた輝やかしい功績は、空前の一大福音である。翻って斯事を深く考える時、地上天国建設の近づきつつあるを示す一つの現はれでなくて何であらう。

吾等が地上天国目標の主なるものである病貧争中の病を滅消する其他面、神は戦争絶滅という大事業を遂行されるのである。これによってみても神の大経綸は着々彼岸に到達しつつある事を知るべきある。

(地上天国十五号 昭和二十五年四月二十日)